ミッション
地球環境システム(大気、雲、雪氷、水、植生等)のメカニズムの解明
宇宙から地球の水循環を観測
Aquaは、地球環境システム(大気、雲、雪氷、水、植生等)のメカニズムの解明を目的として、NASAによって開発された地球観測衛星です。 中でも水循環に関する観測に力を入れているので、ラテン語で水を意味する『Aqua』という名前が与えられました。 Aquaには、NASAだけでなくJAXAやINPE(ブラジル)といった他国の観測装置(センサ)も搭載されており、その開発と運用は国際的なプロジェクトとして行われました。
Aquaは、アメリカ・日本・ブラジルの国際協力プロジェクトに基づいて共同開発され、2002(平成14)年5月、カリフォルニア州バンデンバーグ射場からデルタIIロケットによって打ち上げられました。 衛星本体と打ち上げはNASAが、各種観測センサーはNASA・日本・ブラジルが担当しました。
Aquaに搭載されているセンサの中でJAXAが開発したのが改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)です。 AMSR-Eは、地表や大気から自然に放射される微弱な電波を複数の周波数帯で高精度に観測し、 地球の水循環を解明するために必要なデータを取得するマイクロ波センサで、昼夜や天候に影響されることなく常に観測を行うことが可能です。
AMSR-Eのデータは台風データベースの作成やエルニーニョ現象の観測、そして気象庁の行う天気予報業務などで使われてきました。
AMSR-Eの観測対象
海面水温(Sea Surface Temperature)
マイクロ波を用いると、赤外線では見えない雲の下でも観測できるため、天候を問わずに頻度の高い観測が可能となります。 AMSR-Eでは観測域を地球全体に広げるとともに、従来の2~3倍の高い空間分解能で、海面の水温を高精度に計測します。 エルニーニョ現象等の把握のほか、漁場予測などの実利用にも応用されました。
水蒸気量(Water Vapor)
AMSR-Eは最も効率の良い温暖化気体である水蒸気の分布を定量的に測定します。 気象庁では、数値予報、台風・海氷・エルニーニョ監視等にAMSR-Eデータが幅広く利用され、豪雨等の予測精度向上に貢献しています。
積雪量(Snow Depth)
雪面が太陽光を反射する効果、融雪による土壌水分の増加などは、地表面での熱のやり取りに影響を与えています。 AMSR-Eで新たに採用される低周波数チャネルにより、多雪地域での精度の向上や、湿った雪を判別することが可能となりました。 また、低周波チャネルによる土壌水分観測も、従来より高い精度で観測を行うことができます。
その他の観測目的
台風速報
オホーツク海の流氷速報
黒潮モニタ
Aqua/AMSR-Eの形状や搭載パーツについて
①Aqua/AMSR-E:改良型高性能マイクロ波放射計
地球の水循環を解明するデータを取得するセンサです。
②太陽電池パドル
軌道上において太陽光を電池エネルギーに変換し、衛星に必要となる電力を供給します。
技術
- 6種類のセンサを搭載!
Aquaで使われている技術のここがスゴイ!
Aquaには、JAXAが開発したAMSR-Eの他に、大気赤外サウンダ(AIRS)、高性能マイクロ波サウンダ(AMSU)、 雲、地球放射エネルギー観測装置(CERES)、マイクロ波水蒸気サウンダ(HSB)、中分解能撮像分光放射計(MODIS)の5種類のセンサが搭載されています。
AMSR-E 改良型高性能マイクロ波放射 |
地球の水循環を解明するデータを取得する。 | JAXA |
HSB マイクロ波水蒸気サウンダ |
150~183GHzで、大気の水蒸気を観測する。 | ブラジル |
AMSU-A1, AMSU-A2 高性能マイクロ波サウンダ |
50~89GHzで、大気の温度、水蒸気を観測する。 | NASA(GSFC) |
AIRS 大気赤外サウンダ |
赤外で大気の温度、水蒸気、陸・海面の温度等を観測する。 | NASA (JPL) |
CERES 雲及び地球放射エネルギー観測装置 |
地球及び雲を含めた大気上層-地表面の大気放射エネルギーを観測する。 | NASA (ラングレー) |
MODIS 中分解能撮像分光放射計 |
クロロフィル濃度、表面温度、植生分布、植生バイオマス、雲氷分布を観測する。 | NASA(GSFC) |
仕様
Aquaの仕様・打上げ
衛星質量(Weight) | 約3.1t.(Approx. 3.1t.) | |
発生電力 (Generated Power) |
約4860W(Approx. 4860W) | |
設計寿命(Design Life) | 6年(6 years) | |
軌道 (Orbit) |
高度(Altitude) | 約705km(Approx. 705km) |
傾斜角(Angle of Inclination) | 約98.2度 (Approx. 98.2 deg.) | |
種類(Type of Orbit) | 円軌道(Circular) | |
周期(Period) | 約99分(Approx. 99 minutes) | |
姿勢制御方式 (Attitude Control System) |
三軸姿勢制御方式 (Three-axis Attitude Control System) |
|
衛星運用 (Satellite Operator) |
NASA | |
打上げ年月日 | 2002年5月4日 | |
打上げロケット | デルタIIロケット |
AMSR-Eの仕様
周波数(Frequency) | 6.9GHz | 10.65GHz | 18.7GHz | 23.8GHz | 36.5GHz | 89.0GHz |
地上分解能 (Ground Resolution) |
43km | 29km | 16km | 18km | 8.2km | 3.5km |
バンド幅(Bandwidth) | 350MHz | 100MHz | 200MHz | 400MHz | 1000MHz | 3000MHz |
偏波(Polarization) | 水平および垂直(Horizontal and Vertical) | |||||
入射角(Angle of Incident) | 約55度(Approx. 55 deg.) | |||||
交差偏波特性 (Cross Polarization Characteristics) | 20dB以下(20dB max.) | |||||
観測幅(Obserbation Range) | 1450km | |||||
ダイナミックレンジ(Dynamic Range) | 2.7K – 340K | |||||
絶対精度(Absolute Accuracy) | 1k(1σ)目標 / 1k(1σ)target | |||||
NE△T | 0.3K – 1K(1σ) | |||||
量子化ビット(Quantization Bits) | 12bit | 10bit |
関連情報
地球を見守る人工衛星
陸地、海洋、大気の状態を観測するための地球観測衛星です。災害や気候変動に対応するために、宇宙から私たちの地球を見守っています。
暮らしを支える人工衛星
通信を行ったり、測位(自分の位置を知る)を行ったりするための人工衛星です。新しい技術開発をするための人工衛星も作っています。
衛星プロジェクト ストーリー
人工衛星への熱き想い!
人工衛星は機械ですが、人工衛星を研究開発して運用するために、JAXAの宇宙開発の現場ではプロジェクトチームとして多くの人が協力して働いています。ここでは衛星プロジェクトを支えるストーリーを紹介します。ミッション遂行に向けた熱い想い、大変な話、感動する話、面白エピソード、普段聞けない裏話などなど。
ってだれが運営しているの?
サテライトナビゲーター(サテナビ)は、暮らしを支える人工衛星の開発・運用をしているJAXA第一宇宙技術部門が運営しています。JAXA第一宇宙技術部門の詳細についてはこちらへ。
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