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ミッション
地球を高い解像度で観測・衛星のコスト低減
新たな軌道開拓により、衛星利用の新たな可能性を拓く
JAXAは軌道高度にして300kmより低い軌道を将来の地球観測などで利用するための研究をしています。 この軌道は「超低高度軌道」と呼ばれ、これまでの人工衛星にとって未開拓の軌道領域です。 この超低高度軌道を利用する最初の地球観測衛星が超低高度衛星技術試験機(SLATS:Super Low Altitude Test Satellite)です。 「つばめ」はJAXAが培ってきたイオンエンジン技術を利用して、超低高度衛星を開発するための技術評価を行います。 三菱電機株式会社がバス部プライムメーカーとして、設計・製造を担当しており、協力して開発を進めています。
地上から100kmに大気圏と宇宙空間の境界線(カーマン・ラインと言います)があり、これを超える空間が「宇宙」とされています。 高度が高くなるにつれて空気は徐々に薄くなっていき、宇宙空間に達するころには大気はほとんど無くなるのですが、実は完全に無くなるわけではありません。 多くの地球観測衛星が高度保持する高度600~800kmの軌道には、地上の1兆分の1程度の微量な大気が存在しており、この軌道を高度保持する人工衛星は常にこの微量な大気の抵抗を受け続けるので、除々に高度が低下していきます。 そのため、定期的にガスジェットを噴射して(=燃料を消費して)高度を戻してやる必要がありますが、宇宙にある人工衛星は自動車のように給油ができないので、燃料が尽きてしまうと軌道高度を維持することができなくなってしまい、その時点で寿命を迎えてしまいます。 「つばめ」が飛行する300~180kmの超低高度軌道はさらに地表に近く大気が濃いので、600km~800kmの軌道と比べて約1000倍もの大気抵抗を受けます。
そのため、超低高度軌道での衛星運用は、従来の衛星システムでは軌道維持のための燃料がすぐに枯渇して衛星寿命が極端に短くなってしまうため、実用には向きませんでした。 この課題を解決するために、「つばめ」ではガスジェットに比べ燃料の使用効率が10倍良いイオンエンジンを採用するとともに、大気抵抗が少ない小型の衛星を開発することで、超低高度でも長期間にわたって軌道を維持するための技術を実証します。
「つばめ」により、超低高度衛星の実用化に向けた一歩を踏み出します。
超低高度軌道のメリット
超低高度軌道を利用する人工衛星は、地上に近い分、より地球を高い解像度で観測することができます。たとえば、これまでの地球観測衛星の観測センサと同じ解像度を半分以下サイズのセンサで実現できる可能性があります。 これにより、観測センサの価格を大幅に安くするなどして衛星のコスト低減を図り、将来の地球観測の利用をさらに拡大していくことが期待されています。
技術
- ”はやぶさ” にも採用されているイオンエンジン
- 原子状酸素モニタシステム
「つばめ」で使われている技術のここがスゴイ!
①イオンエンジン
超低高度軌道では大気抵抗が増大することになりますが、大きな推力は必要ありません。その代わりにとても長い時間動作することが求められるので、推力が小さくても燃料の使用効率が優れているエンジンが必要となります。 数ある宇宙用のエンジンの中で、これに最も適しているのがイオンエンジンです。イオンエンジンは惑星探査機の ”はやぶさ” にも採用されているエンジンで、推力は1円玉2枚分の重さ程度の力しかありませんが、燃料効率がよく、長時間動作させることができます。 イオンエンジンの推進薬は、最も大きな推力が発揮できるとキセノンガスを使います。また、”はやぶさ” に比べて推力の大きい ”きく8号” にて開発した技術を採用しています。
②原子状酸素モニタシステム
地表に近いほど大気が濃くなりますが、超低高度域では「原子状酸素」と呼ばれる物質が増加し、人工衛星によく用いられている金色の熱制御材(多層インシュレーション:Multi Layer Insulation)等を損傷させてしまうことが知られています。
原子状酸素とは、通常、2つの原子が結合して分子を形成している酸素ガスが、宇宙からの放射線や紫外線により、解離して、1つの原子として存在している状態をいいます。このため、反応性が高く、衛星表面の材料を損傷させることとなります。
「つばめ」では、多層インシュレーションの外側に原子状酸素に強いコーティングを施すなどして対策を行っています。また、原子状酸素モニタシステムを搭載し、原子状酸素の濃度や各種材料が原子状酸素との反応でどのように劣化していくのかを計測します。 取得したデータは、将来の超低高度衛星の設計に反映していきます。
仕様
「つばめ」の仕様・打上げ・運用結果
項目 | 仕様 |
主要ミッションセンサ | (1)原子状酸素(AO)モニタシステム (a) AO計測センサ (b) 材料劣化モニタ (2)小型高分解能光学センサ |
サイズ | 2.5(X)× 5.2(Y)× 0.9m(Z) (軌道上展開状態) |
質量 | 383kg |
発生電力 | 1140W以上 |
設計寿命 | 2年以上 |
軌道保持結果 | イオンエンジンを用いて7段階の軌道高度において軌道保持運用を実施した。 271.5km及び216.8km 38日間、 250km、240km、230km、181.1km及び167.4km 7日間 (167.4kmでは大気抵抗が大きいため、イオンエンジンとRCSを併用して軌道保持を実施した。) |
打上げ年月日 | 2017年12月23日 |
打上げロケット | H-IIAロケット37号機による相乗り打上げ (主衛星:「しきさい(GCOM-C)」) |
運用終了年月日 | 2019年10月1日 |
関連情報
インタビュー
超低高度衛星技術試験機「つばめ」(SLATS)
プロジェクトマネージャ 佐々木 雅範
超低軌道を飛行する衛星技術の確立をめざして
株式会社ジェネシア 江野口 章人
蓄積された知見を活かし、高性能かつリーズナブルな価格の製品を開発
明星電気株式会社 宇宙防衛事業部
技術部 技術グループ 畠山 千尋
常にチャレンジする意識を持って
宇宙開発に貢献したい
旭光電機株式会社 技術部開発課
課長 森 惣平
革新的技術で宇宙に初挑戦!!
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人工衛星への熱き想い!
人工衛星は機械ですが、人工衛星を研究開発して運用するために、JAXAの宇宙開発の現場ではプロジェクトチームとして多くの人が協力して働いています。ここでは衛星プロジェクトを支えるストーリーを紹介します。ミッション遂行に向けた熱い想い、大変な話、感動する話、面白エピソード、普段聞けない裏話などなど。
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JAXA 第一宇宙技術部門について