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QZナビ:準天頂衛星システムとみちびき

What is 'MICHIBIKI'?準天頂衛星初号機みちびきって?

2010年9月11日に鹿児島県 種子島宇宙センターから、ある一機の衛星が打ち上げられます。

この衛星は準天頂衛星 初号機「みちびき」と名づけられ、日本国内のさまざまな業界・産業分野から活躍を期待されています。

本コーナー、QZナビでは、全8回にわたって準天頂衛星システムとは何か。また、みちびきの役割などをさまざまな視点から解説していきます。

What is QZSS?準天頂衛星システムって?

わかりやすく説明すると、準天頂衛星システム(以後、QZSS)とは、日本版GPSです。

GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)は、アメリカ合衆国の運用する測位システムで、カーナビや携帯電話のナビ、船舶の誘導などに幅広く使用されています。

そしてQZSSは日本のほか東アジア・オセアニア地域をカバーする地域測位システムで、時にはGPSのように(GPS補完)、時にはGPSの弱点を補い(GPS補強)、私達に正確な情報を送信してくれます。ひとまず「QZSSは、GPSの補完と補強を行う」と覚えておいてください。

Japan is watched right above. 真上から日本を見守る準天頂衛星システム

QZSSは、日本のほぼ天頂(真上)を通る軌道を持つ衛星を複数機組み合わせた衛星システムで、常に1機の衛星を日本上空に配置することができます。衛星がほぼ真上に位置することで、山間部や都心部の高層ビル街など、GPS衛星の電波が測位を行うために必要な必要な衛星数が見通せない場所や時間(※1においても、準天頂衛星の信号を加えることによって測位ができる場所と時間を拡げることができます。

※1:測位を行うためには、4つ以上の衛星から測位信号を受信する必要があります。

コンステレーションイメージ

準天頂衛星 初号機 「みちびき」

About MICHIBIKI 準天頂衛星 初号機 「みちびき」とは

今回QZSSの最初の衛星として打ち上げられる「みちびき」。その役割を整理してみましょう。

愛称:みちびき:MICHIBIKI
形状:高さ6.2m × 幅3.1m × 奥行2.9m(打上げ時)
太陽電池パドル両翼端間:25.3m
質量:打上げ時質量:約4トン(打上げ時)
発生電力:約5kW
設計寿命:10年
軌道:準天頂軌道
軌道高度:近地点:約32,000km、遠地点:約40,000km
軌道傾斜角:約40度
軌道周期:23時間56分

「みちびき」は、準天頂衛星システムの第1段階としてGPSの補完・補強をするとともに、QZSSの試験機としてさまざまなデータ収集や実験を行う2面性を持ちます。まさに、日本の測位システムを「みちびく」衛星といえます。

QZSS+GPS=Good!

QZSSはGPSに対抗するものではなく、時にはGPSのように、また時にはGPSの弱点を補い、私たちに正確な情報を送信してくれます。
GPSの誤差や弱点を準天頂衛星システムはどのように解決するのか、QZSS+GPS=?を解いてみることにしましょう。

あたかもGPSのように:GPS補完

QZSSでは、米国が進めている「GPS近代化」とほぼ同一の測位信号を送信して、GPS利用者の利便性を向上させることが目的の一つです。これが実現すると、日本のGPSユーザは、天頂付近にある"あたかもGPSのような準天頂衛星"をいつでも利用できるようになります。

測位を行うためには、最低4つの衛星からの受信が必要で、さらにその衛星の配置によって、精度が変わってしまいます。常に日本の天頂にGPSと同じ役割を持つ準天頂衛星があれば、GPSだけで測位した場合よりも高いアベイラビリティ(※2)や、より良い衛星の幾何学的配置(※3)が得られ、より高い精度を得ることが可能になります。

※2:アベイラビリティ=測位をするために必要な、4機以上の衛星を捕らえることができる時間率または所定の測位精度が得られる時間率

※3: 幾何学的配置=測位をする時に利用する、衛星の幾何学的な配置。この幾何学的配置が悪いとき(衛星が同じ方向に固まっている場合)は、ユーザの測位精度が悪くなってしまいます。

GPSのみの場合

GPSのみの場合

GPS衛星が3機しか利用できない場合は、(3次元)測位が不可能。

準天頂衛星+GPSの場合

準天頂衛星+GPSの場合

GPSが3機しか利用できない場合は、準天頂衛星があたかもGPSのように機能。GPS単独利用では測位できない場所、時間でも測位が可能になる。

都市部でのアベイラビリティ増大例(東京銀座地区3Dシミュレーション)4衛星以上観測可能な時間率

GPSをパワーアップする:GPS補強

私たちの生活に浸透しているGPSですが、その信号は高度2万km以上の宇宙から届くため、大変微弱なレベルまで弱まって私たちのところまで届いています。また、GPS衛星から、私たちに届くまでにさまざまな自然環境による影響を受けるほか、地表の地形、周辺の電波環境などによって、電波が届きにくかったり、誤差が発生したりしています。そのため、GPSの情報を補正するためのいろいろな方式が考えられ、位置をより正確に知る手助けをしてくれています。

準天頂衛星では、GPSの精度を向上させる精密な補正信号を地上の基準点で受信した信号を基に作り、その信号は障害物の影響を受けにくいほぼ真上から送られるので、GPSの信号を補い、日本全国どこでも高精度な測位が実現できることが期待されています。

GPSのみの場合

GPSのみの場合

GPSのみでは約10mの測位誤差があります。

準天頂衛星+GPSの場合

準天頂衛星+GPSの場合

準天頂衛星の補正信号により、GPS信号を補って、測位精度を高めます。
高速移動体で1m以下、低速移動体で数センチメートルの精度を目指します。

最高のQualityをめざして【GPS補強+次世代基盤技術の開発】

GPS補強に関する実験としては、(独)電子航法研究所(ENRI)がGPSの"L1C/A信号と類似な信号(L1-SAIF)"を利用して、目標制度1mの「サブメータ級補強信号」を送信する実証実験を行う予定です。この補強信号は、位置を補正する情報だけでなく、GPS信号が安全に利用できるかどうかを判断する際に使用する情報(インテグリティ情報と呼ばれています)なども含まれています。

また(財)衛星測位利用推進センター(SPAC)はこのL1-SAIF信号を使って、測位時間短縮のための捕捉支援情報(利用可能な測位衛星の時刻・軌道情報)を送信する利用実証実験を行う予定です。

このL1-SAIF信号は測位信号と同じ周波数帯で放送されるため、他の地上のインフラ経由で提供される補強信号と違って、補強信号を受信するための別のアンテナや受信機が不要なので、より低コストでこれまで以上の高精度が実現し、さまざまな利用への応用に大きな期待がされています。

さらに、GPSとは異なる準天頂衛星独自の"実験用信号(LEX)"を利用してcm級の精度を目指して、国土地理院(GSI)が測量(静止ユーザー)向けに技術実証実験を、SPACが低速移動体向けに利用実証実験を行う予定です。

次世代衛星測位システムに向けた技術開発としては、このLEX信号を使ってさらに高速で高精度な測位を行うため、より精密な測位情報と補正情報を合わせた信号を送る実験も計画しています。

GPSの近代化計画

米国は「GPSの近代化計画」を進めています。今現役で活躍しているGPS衛星が寿命や故障によって新しい衛星が必要になったときに、新型のGPS衛星が順番に打ち上げられていきます。GPSは、24機+軌道上予備機数機(5、6機程度)で構成されているので、全てを入れ替えるにはまだまだ時間がかかります。準天頂衛星では、GPS近代化と同様にL2、L5(※4)民生用信号(※5)を送信することを計画しています。日本付近でほぼ真上に位置する準天頂衛星からのGPS近代化と同じ信号が受信できれば、世界中で最も早く新しい信号が利用可能になり、GPSの新時代を先取りすることができます。

GPSの新時代を先取りすることで、新たなGPS受信機やアプリケーションの開発、利用分野の開拓など、GPS利用の更なる発展が期待されています。

※4:GPSではLバンドという周波数帯が使われており、その中でもL1、L2、L5などと分類され、それぞれ同じLバンドでも波長の違う信号が使われています。現在は、民生用の信号としてはL1C/AとL2C(一部のGPS)が利用可能です。

※5:GSPの信号には、「民生用」と「軍事用」の信号があり、一般的に利用できるのは、「民生用信号」です。

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