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2024.07.08(月)

「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の広帯域放射収支計BBRの初画像が公開されました!

雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)の4つのセンサのひとつ、広帯域放射収支計(BBR)の初画像がESAから公開されました。

「はくりゅう」は、日本と欧州が協力して開発し、2024年5月29日に打ち上げられた地球観測衛星です。BBRは、ESAが開発を担当したセンサのうちのひとつで、太陽から受け取るエネルギーや地球から放射されるエネルギーの収支を測定します。BBRは、6月18日にスペイン北部からアルジェリアまでの約1300kmにわたる地中海西部の軌道上を撮影し、アトラス山脈付近の雷雲を捉えました(図1)。

図1:「はくりゅう」の4つのセンサのひとつ、広帯域放射収支計(BBR)の初画像。 (c) ESA

BBRは、衛星が軌道に沿って移動する際に、3方向(衛星の真下、衛星の進行方向前方、衛星の進行方向後方)から同時に大気を観測するという非常にユニークなセンサです。1つの視野だけでは、エネルギーがどの方向に向かっているのかを捉えることはできませんが、複数の角度からの観察によって大気圏上端で見られるエネルギーの方向分布が得られ、より詳細なエネルギーの動態を知ることができます。
さらにBBRのデータと、日本が開発した雲プロファイリングレーダ(CPR)含む「はくりゅう」搭載のほかの3センサのデータを組み合わせて比較することで、雲やエアロゾル、放射エネルギーがどのように相互に作用しているのか、さらに理解が加速することが期待されます。

(補足1)BBRセンサの解説:
地球の気候は、地球が太陽から受け取るエネルギー量と、地球から宇宙に放出されるエネルギー量のバランス(放射収支)によって決まります。大気中の雲やエアロゾルは、太陽からのエネルギーを跳ね返したり、地球からエネルギーが宇宙へ逃げていくのを防いだりする役割があり、地球の安定した気温を維持するために不可欠なものです。しかしこうした雲やエアロゾルの効果がどれくらい作用するのか、またこれらがどのように気候変動に影響しているのかなど、定量的に解明されていないことも多いのが現状です。

図2: BBRの観測概念図。 (c) ESA/ATG medialab

BBRにより、太陽から入射するエネルギーがどれだけ宇宙に反射されているか、また同時にどれだけの熱エネルギーが地球の表面から放出されているかを正確に測定できるようになります(図2)。これにより、地球の気候を支配している複雑な放射収支の理解を深め、気候のメカニズムを解明することに貢献します。

(補足2)BBR初画像の解説:
初画像は、BBRが測定を開始してからわずか数時間後の6月18日に、スペイン北部からアルジェリアまでの約1300kmにわたる地中海西部を周回しているときに撮影されたものです(図3)。図1は、アトラス山脈付近の高度10kmまでそびえ立つ雷雲を捉えた様子です。カラーマップは、放射輝度(エネルギーがどれだけ宇宙に反射されるか)を示しています。 白く明るい雲は太陽光を多く反射しているのがわかります。 BBRの3つの異なる視野角により、わずかに異なる位置から同一の雲を捉えることで、1つの視野からではわからないエネルギーの方向を知ることができます。

図3:BBRの初画像(広域)。 (c) ESA

詳細はESAの記事をご覧ください。
https://www.esa.int/Applications/Observing_the_Earth/FutureEO/EarthCARE/EarthCARE_offers_a_sneak_peek_into_Earth_s_energy_balance

EarthCARE/CPR特設サイト

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