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2024.07.23(火)

先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)のKaバンド直接伝送系により3.6Gbpsの高速データ伝送に成功

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)に搭載したKaバンド(26GHz帯)(※1)の電波による直接伝送系を用いて、衛星-地上局間において3.6Gbps(※2)の高速データ伝送に成功しました。通信速度3.6Gbpsは、地球観測衛星が持つ通信速度として世界最高性能(2024年7月現在)であり、直接伝送系にはJAXA研究開発部門で進めた先進的な研究成果が活用されています(※3)。

Kaバンド直接伝送系は「だいち4号」が観測した大容量のデータを地上に送り届けるための通信システムです。地球観測衛星は地球を周回しているため、地上局との見通しが得られるわずか10分程度の間に、衛星から最大で2,000km以上離れた地上に向けて観測データを送り届けることが必要です。地球観測衛星の観測幅の拡大により観測データ量は増大化の一途をたどっているため、今後の地球観測衛星のデータ伝送を支える技術の確立は大きな課題の一つです。
「だいち4号」で採用したKaバンド(26GHz帯)は、従来「だいち2号」等で採用してきたXバンド(8GHz帯)と比較して使用可能な周波数帯域が広いことが特徴です(※1)。「だいち4号」ではKaバンドの広い帯域幅を用いて周波数多重(1.8Gbps×2周波)を行い、多値変調方式(16QAM)と併用することで伝送速度の高速化を実現しました。一方、Kaバンドの電波は雨や大気で減衰する性質を持つため、減衰分を補填するために信号を増幅する増幅器の高出力化が必要となり、その際に発生する信号歪みが通信品質を劣化させることが課題の一つでした。この課題の解決のため「だいち4号」では、JAXA研究開発部門の研究成果(※3)を活用し、増幅器の信号歪みを直接伝送系のデジタル変調器で補償するDPD(Digital Predistortion)機能を採用しました。
今後1年間をかけて、国内外に存在する複数の地上局にデータを伝送して、雨や大気のさまざまな状況により変動する電波減衰への対策の有効性等、継続的にKaバンド高速データ伝送技術の評価を行います。
「だいち4号」で実現したKaバンド直接伝送技術は、将来の地球観測衛星におけるデータ伝送高速化の試金石となります。

Kaバンド直接伝送系の構成
軌道上のだいち4号から送られた3.6Gbpsの信号を地上局で受信した結果
3.6Gbps(1.8Gbps×2波)の受信信号スペクトラム(左)と16QAM信号受信コンステレーション(右)
地上局はスウェーデン宇宙公社(SSC)エスレンジ局を使用

★三菱電機株式会社様がプライムメーカーとして設計・製造を担当し、JAXAが実施する初期運用を支援しています。

※1:Kaバンドの地球探査衛星業務の割り当て帯域は25.5~27.0GHz(帯域幅1.5GHz)であり、Xバンド(8.025~8.4GHz(帯域幅0.375GHz))の4倍。
※2:3.6 Giga bit per second:1秒間に3.6ギガのビットを伝送する通信速度。1可視10分間で270Gbyteのデータ伝送が可能。「だいち2号」(Xバンド、0.8Gbps)の4.5倍の通信速度で、家庭の一般的なインターネット回線(1Gbps以下)と比べてもとても速い。
※3:研究開発部門の研究成果は下記参照。
研究紹介HP https://www.kenkai.jaxa.jp/research/society5/kaband.html

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