お知らせ

2025.01.23(木)

「だいち4号」の衛星から地上へのデータ伝送が世界最速とギネス世界記録TMに認定されました!

2024年7月23日に「先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)のKaバンド直接伝送系により3.6Gbpsの高速データ伝送に成功」とお知らせしておりましたが、この記録がなんと2024年12月19日にギネス世界記録TM(※1)に認定されました!

2024年12月19日に筑波宇宙センターで公式認定証贈呈式が開催され、JAXA職員が見守る中、ギネス世界記録公式認定員から代表の第一宇宙技術部門先進レーダ衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 勘角 幸弘と研究開発部門第一研究ユニット ユニット長 谷島 正信に公式認定証が授与されました。

ギネス世界記録認定内容

The fastest RF direct downlink speed from an Earth observation satellite to ground stations is 3.6 Gbps and was achieved by JAXA and Mitsubishi Electric Corporation (both Japan) with the Satellite ALOS-4 on 23 July 2024
最速の地球観測衛星から地上局への直接伝送

これは、先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)が観測したデータを地上に送るための衛星-地上局間の通信で、3.6Gbpsという速さで高速データ伝送に成功し、これがギネス世界記録に認定されたことを示しています。

「衛星-地上局間において3.6Gbpsの高速データ伝送」と言われても、どれくらい速いのか分かりませんよね。「bps」とは1秒間で1bitのデータを送れる速度ということです。そして、8bitで1Byteとなりますので、3.6Gbpsは1秒間で450MB(Mega Byte)、1分間で27GB(Giga Byte)のデータを送ることができる速さということです。 私たちが日頃から使っているスマートフォンで考えると、50GBのプランを契約していても2分も使えないと考えるとすごいですね。

ギネス世界記録認定に関する喜びの声

「だいち4号」の計画段階から開発に携わり、公式認定証贈呈式で公式認定証を受け取った勘角プロジェクトマネージャと谷島ユニット長からのコメントです。

「だいち4号」は、「だいち2号」の分解能を維持しつつ観測幅を4倍に拡大することを目指していたことから、観測データ量の増加に対する地上への伝送技術が計画立案時における課題と捉え、早い時期から研究開発部門の関係者と議論を重ねて高速化に向けた新規技術を採用することとしました。以降、開発においても設計、試験等において研究開発部門と協力し、また三菱電機株式会社様のご支援をいただきながら達成することができましたことは非常に嬉しく思っています。今後の衛星を検討する際にも様々な課題が出てくると思いますが、また共に頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

第一宇宙技術部門先進レーダ衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 勘角 幸弘

「だいち4号」の計画立案時に実績の有るXバンドではなく、より割当周波数帯域が広いKaバンドを用いることを決断し、目標の3.6Gbps伝送が達成できて嬉しく思います。また、研究開発部門の研究で成果をあげていた信号歪みを補償する技術(※2)が採用され、それが実現できたことも素晴らしいことと考えています。今回は3.6Gbpsという伝送速度でしたが、更なるデータ伝送の高速化に向けて研究開発を続けてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

研究開発部門第一研究ユニット ユニット長 谷島 正信

観測幅が4倍に、2偏波観測でより分かりやすい観測画像に!

「だいち4号」のデータ伝送が高速になることで、どのようなことができるようになったのでしょうか?

「だいち4号」は太陽同期準回帰軌道という軌道で常に地球の周りを回っています。
(「地球を見守る人工衛星たち」では「だいち4号」が地球の周りを回っている様子をご覧いただけます)
観測されたデータは地上に送られなければ、私たちはデータを利用することができませんが、地上との通信は地上局と呼ばれるアンテナが設置されている場所の上空付近を飛んでいるわずか10分程度しか通信をすることができません。そこで、「だいち4号」は観測したデータを一旦、衛星内にある半導体メモリに記録し、地上局に送信できるタイミングで送っています。

しかし、データ伝送速度が遅ければ10分間で沢山のデータを送ることはできません。
「だいち2号」では0.8Gbpsという通信速度でしたので、10分間で60GBのデータを送信できていましたが、そのままの速度では観測幅が増えても観測できる距離が減ってしまいます。
そこで、「だいち4号」では通信速度を「だいち2号」の4.5倍である3.6Gbpsという高速での通信ができるよう設計され、10分間で270GBのデータ伝送が可能ということになりました。

その為、「だいち2号」では3m分解能で観測できる観測幅は50kmだったものが、「だいち4号」では3m分解能で観測できる観測幅は4倍の200kmとなり、さらに、HH偏波(水平偏波送信・水平偏波受信)およびHV偏波(水平偏波送信・垂直偏波受信)と呼ばれる2種類の観測方法による2偏波観測を行うことが常時可能となりました。

2偏波観測で得られたデータは合成することで、疑似的なカラー画像を作りだすことが可能となり、より地表の状況の判別が簡単になり、災害状況の把握や森林伐採の監視などに貢献することが期待されています。

だいち2号 だいち4号
0.8Gbps 通信速度
4.5倍
3.6Gbps
60GB 10分間で通信できるデータ量 270GB
50km 観測幅
4倍
200km
2偏波観測はできていたが、
常時行うことはできなかった
観測方法 日本近辺は
3m分解能で常時2偏波観測可能に

ますます期待される高速データ通信

「だいち4号」は筑波宇宙センター(茨城)、地球観測センター(埼玉)とスウェーデン宇宙公社(SSC)エスレンジ局(スウェーデン)、イヌビック局(カナダ)の地上局が使われています。筑波宇宙センターと地球観測センターでは、1日に3~4回、2つの地上局で同じデータを受け取っています。エスレンジ局とイヌビック局では緯度が高いため、「だいち4号」が地球を1周する100分に1回通信することができています。
観測データは順次地上局へ送られていますが、それでも、観測するデータが膨大な量であるため、観測する地域によって分解能を10mにするなど、データ容量を抑えて対応しています。

今後もデータ伝送の更なる高速化が期待されており、研究開発部門での高速データ伝送の為の研究開発が進められています。これからの発展が楽しみですね。

関連情報

※1:ギネス世界記録はギネスワールドレコーズリミテッドの登録商標です。
※2:研究開発部門ウェブサイト「高速伝送システムの研究」
https://www.kenkai.jaxa.jp/research/society5/kaband.html

2025.1.23  文:松﨑

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