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2022.01.21(金)

GPM/DPR降水推定手法に関する論文の日本気象学会 気象集誌論文賞の受賞について

長崎大学 瀬戸心太准教授を筆頭著者とし、JAXA第一宇宙技術部門 地球観測研究センター(EORC)の久保田拓志 研究領域主幹を共著者として発表した、全球降水観測(GPM)二周波降水レーダ(DPR)に関する以下の論文が、日本気象学会 2021年気象集誌論文賞を受賞しました。
気象集誌(Journal of the Meteorological Society of Japan)は、日本気象学会の英文学術論文誌(Impact Factor:2.236)で、創刊が1882年という歴史ある論文誌です。この賞は、同誌に掲載された論文の中の優秀な論文に対する顕彰で、2021年は約80編の掲載論文のうち2編が受賞しています。

著者:
瀬戸 心太(長崎大学)、 井口 俊夫(メリーランド大学)、 Robert MENEGHINI(NASA)、阿波加 純(東海大学)、久保田 拓志(JAXA)、正木 岳志(リモート・センシング技術センター)、高橋 暢宏(名古屋大学)
論文タイトル:
The Precipitation Rate Retrieval Algorithms for the GPM Dual-frequency Precipitation Radar(全球降水観測計画二周波降水レーダ(GPM/DPR)の降水強度推定アルゴリズム)
引用:
Seto, S., T. Iguchi, R. Meneghini, J. Awaka, T. Kubota, T. Masaki, and N. Takahashi: The Precipitation rate retrieval algorithms for the GPM Dual-frequency Precipitation Radar. J. Meteor. Soc. Japan, 99, 205-237. https://doi.org/10.2151/jmsj.2021-011
選定理由等:
気象集誌編集委員長による「2021年気象集誌論文賞について」
気象集誌論文賞 歴代受賞者一覧

本論文(Seto et al. 2021)は、筆頭著者の瀬戸准教授を中心に、 GPM主衛星に搭載されているDPRのKu帯とKa帯という2種類の周波数の観測情報から降水強度を推定する手法についてまとめたものです。以前の熱帯降雨観測衛星(TRMM)降雨レーダ(PR)のKu帯レーダのアルゴリズムで培われた手法をもとに、DPRで新たに開発されたKa帯レーダの情報を用いて推定精度を向上させた手法を開発しています。

衛星搭載降水レーダは、地上設置の気象レーダの観測といくつかの点が大きく異なります。例えば、衛星搭載レーダでは、全球をカバーするため多様な大気環境における降水推定に対応できることが必要であること、観測視野が大きいためビーム内非一様性の補正が不可欠であることが挙げられます。これらの主要な課題に対して、本論文では、二周波表面参照法等を活用することで多様な大気環境に対応し、さらに、補正手法を構築することでビーム内非一様性に対応しています。これらの手法を通じて、DPRでは雨滴粒径分布パラメータのような降水粒子に関する情報を推定し、DPRで得られる特徴的な観測情報となっています。気象集誌編集委員長による「2021年気象集誌論文賞について」では、”本研究は衛星降水レーダアルゴリズム開発研究において、国際的に他の追随を許さない完成度に到達している。本研究を基礎とし作成されるDPR標準降水プロダクトが、世界的に広くユーザを獲得し衛星降水観測研究の発展に引き続き寄与していくことは疑いない。”とされています。

GPM/DPRの観測データは、2014年2月の打上げ以降、多くの科学研究で活用されており、世界の様々な地域での降水に関わる理解の深化に貢献しています(「長期衛星降水観測から明らかになった最近10年間の梅雨前線帯の降水の活発化」、「雨粒の大きさの世界的な分布と季節変化を宇宙から観測(論文解説)」等)。

本論文で記述された降水推定アルゴリズムで処理されたGPM/DPRの観測データは、気象庁の数値気象予報でも定常的に使われており、私たちの日々の天気予報にも役立てられています。

【関連リンク】
気象集誌編集委員長による受賞についての詳細文書
長崎大学お知らせ「気象集誌論文賞を受賞しました!!」
リモート・センシング技術センターお知らせ「日本気象学会 気象集誌論文賞の受賞について」
GPM/DPRウェブサイト(データのダウンロードや説明文書等)
GPM/DPRの三次元降水観測動画「JAXA 3D RAINFALL WATCH」

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