お知らせ
2024.08.26(月)
衛星データを「聴く」!?
~EarthCARE/CPR初画像データを用いた可聴化の検討~
JAXAでは、2024年5月29日に打ち上げられた雲エアロゾル放射ミッション「EarthCARE」衛星(はくりゅう)搭載の雲プロファイリングレーダ(Cloud Profiling Radar:CPR)による初観測画像データを用いて、衛星観測データを「可聴化」し、宇宙からはくりゅうが聴いた「音」を表現しました。
「可聴化」とは?
「衛星観測データ」と聞くと、宇宙から見た詳細な陸や海、あるいは大気の情報を可視化した画像を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。衛星観測により得られる地球に関する様々な情報は、データ(数値)として一般に公開されていますが、多くの場合その数値をルールに基づいて画像に変換することで、私たちが視覚的に理解しやすい情報として様々な分野で活用されています。このような方法はデータの「可視化(visualization)」と呼ばれます。
一方、あるルールに基づいて数値を音に変換することは、データの「可聴化(sonification)」とも呼ばれ、身近な例だと心拍のタイミングをアラーム音で知らせる心電図モニタなどもこのデータの可聴化に当たります(※1)。今回JAXAでは、EarthCARE(はくりゅう)が観測したデータを音に変換するルールを検討し、宇宙からはくりゅうが聴いた「音」を表現することを試みました。
はくりゅうのデータを用いた「可聴化」
はくりゅうに搭載されている雲プロファイリングレーダCPRは、W帯(94GHz)における世界初の衛星搭載ドップラーレーダで、JAXAとNICTが共同で開発を行いました。初画像では日本の東海上にある梅雨前線上の雲域を観測し、雲の内部を捉え、世界で初めて、宇宙から雲の上下の動きを測定することに成功しています。
可聴化に当たっては、CPRから発せられた電波が雲に当たって跳ね返ってくる強度のデータを使用し、跳ね返る電波が強いほど「大きな」「高い」音が鳴るように変換を行っています。さらに、日本らしい雰囲気が感じられるよう琴の音色を採用したり、古くから日本でよく使われる五音音階(四七抜き音階)への変換をメインで採用したりするなどの工夫を行うことで、より耳馴染みの良い可聴化を実現しました。こうしたルールの構築は、他の衛星よる観測データにも容易に転用が可能であるというメリットがあり、様々な衛星データによる可聴化も期待されます。
動画では、はくりゅうが観測した雲の断面を、上から下に動く線に従って変換した音をお聞き頂けます。雨と雲の境目と考えられる、最も反射強度の強い雲の中心内部に向かって音が大きく・高くなる様子を聞き取ることができ、データの特性を耳からも把握することができることがわかります。
宇宙・地球観測分野でのデータの可聴化の検討例(※2)はこれまでにもいくつかありますが、音楽的な音色への半自動的な変換を含めた検討は例が少なく、様々な衛星観測データに適用することで広報分野等での利用が期待されます。JAXAでは、今後もこのような新しい手法も含めた衛星データの理解増進や利用拡大に取り組んでいきます。
※1:寺沢、データ可聴化と音デザイン—時系列信号の可聴化に着目して—、日本音響学会誌74巻11号(2018)、pp.618–623
※2:宇宙・地球観測分野でのデータの可聴化の検討例
・NASAによる天文分野での可聴化例
・リモートセンシングデータの可聴化システムの提案
・宇宙科学データの可視化・可聴化 ~教育・広報利用~
・衛星データ可聴化技法の探求~地球の響きと人間音楽の調和を探して~
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