きく8号(ETS-VIII) 画像

運用が終了した衛星

運用終了

きく8号(ETS-VIII)

技術試験衛星VIII型

ミッション

確実に通信ができる環境を提供し、人々の暮らしをより安全で豊かなものにする

移動体通信をもっと便利に

「きく8号」は移動体通信をもっと便利にすることを目的とした技術試験衛星です。
もはや私たちの生活にとって必須アイテムとなったスマートフォン。 いつでもどこでも通信できることが当たり前のことのように感じられますが、肝心なときにアンテナマークが消えていて通話できなかった、なんて経験ありませんか? もしもそれが事故や災害時などの一刻を争う状況だったら一体どうなるのでしょう・・・考えただけでも怖くなってしまいますね。
そんな万が一のときにも確実に通信ができる環境を提供し、人々の暮らしをより安全で豊かなものにすること。そのミッションを果たすべく、「きく8号」は更なる技術開発のための、大きな役割を担っています。

いつでもどこでもどんなときも-それが人工衛星の強み

通信可能なエリアを広げること、災害時でも確実な通信手段を提供すること、カーナビゲーションに必要な衛星基盤技術を修得することなど、「きく8号」は様々な分野で技術的な課題にチャレンジしています。

いつでもどこでも通信するために役立つ
いつやってくるかわからない地震や台風などの自然災害。 もし地上の中継局や電話局が壊れてしまったら完全に音信不通になってしまい、被害の状況がまったくわからなくなってしまいます。 しかし、「きく8号」が搭載している交換機を利用すれば、地上の災害の影響をまったく受けずに通信を行うことができるので、安否の確認や被災者の救援をスムーズに行うことが出来ます。 「きく8号」はいざというときに大きな力を発揮します。

災害時の迅速な対応に役立つ

「きく8号」は日本上空の宇宙で大きなアンテナを広げています。 そのため、日本中、山間部や離島、海の上や、さらに周辺のアジアの国々との間でも、いつでも通信をすることができます。「きく8号」があれば、肝心なときに通信圏外、といったことがぐっと少なくなるのです。
また、「きく8号」のアンテナは世界最大クラス。感度が高いため大掛かりな地上端末を必要とせず、とても小さな端末でも問題なく通信ができるのです。

カーナビゲーションをもっと便利にするために役立つ
カーナビゲーションの利用でおなじみのGPS衛星は、地上から見える数が多ければ多いほど正確な位置を計測することができます。 しかしGPS衛星は地球のまわりをぐるぐると周る周回衛星なので、地上から見える数が少ない時間帯があり、正確な位置を計測しづらいことがあります。
では、もし静止衛星を測位衛星として利用できたらどうでしょうか。
いつも決まった位置に見える静止衛星の数を増やせば、精度の高い測位衛星として、より正確な位置の計測が可能になります。
「きく8号」は静止衛星を測位衛星として利用するための基本的な技術を修得するために、さまざまな実験を行います。

「きく8号」の形状や搭載パーツについて

①太陽電池パドル
軌道上において太陽光を電気エネルギーに変換し、衛星に必要となる電力を供給します。

②アンテナ給電部
送受信をつかさどる役割を持っています。

③測位実験用アンテナ
測位に必要な情報を地上に送る役割を持っています。

④大型展開アンテナ
テニスコートがすっぽり入る大きさのアンテナをニつ搭載しています。

技術

  • 大型展開アンテナ
  • 衛星バスシステムの開発

「きく8号」で使われている技術のここがスゴイ!

大型展開アンテナ

世界最大級!超巨大アンテナがスゴイ!

「きく8号」に搭載されているアンテナは19メートル×17メートルという実に大きなもの。 大きなアンテナを作る技術は、日本の「きく8号」を含めて世界に数例しかありませんが、その中でも「きく8号」のアンテナは、現時点で世界最大級です。

テニスコートがすっぽり収まってしまうほどのこのアンテナは、打上げ時には折り畳み傘のようにたたまれて、直径1メートル、長さ4メートルほどのコンパクトな状態で収納されます。 そして打上げ後に宇宙空間で切り離され、まるで花が咲くように美しい大きなアンテナを展開するのです。 宇宙からの通信を確実にするために、「きく8号」にはさまざまな工夫が凝らされています。


「きく8号」の主要ミッションである携帯型端末による移動体衛星通信・放送実験には、19メートル×17メートルという大型アンテナが必要となります。 このような大型のアンテナを宇宙で展開するために以下のような技術開発を行っています。

(1) 大型展開アンテナの構造様式は、高鏡面精度(鏡面精度要求は2.4mmRMS)と大型展開アンテナの口径の拡張性の要求を満足するためにモジュール構造としています。
(2) 大型展開アンテナは、ほぼ正六角形のモジュールを14個連結して構成し、外径最大寸法は約19メートル×17メートルになります。
(3) 「きく8号」では、送信用と受信用にそれぞれ1面ずつアンテナを搭載します。
(4) 各モジュールはワンタッチ傘と似た展開トラス構造で、多数のケーブルを引っ張ってパラボラ面を構成します。
(5) 打上げ時には、直径1メートル、長さ4メートルの大きさに収納されます。 またこのアンテナ展開の関する技術は将来の月・惑星探査機、地球観測などに必要な宇宙インフラを構築するために必要となる大型構造物技術の蓄積になります。

「きく8号」と「ガルーダ」の展開アンテナの違い

「きく8号」    「ガルーダ」   
・モジュール結合構造
・高い鏡面精度の実現
・周波数の有効活用が可能
・大型化、他の宇宙構造物への発展が容易
・製造性の向上、地上試験が容易
・リブ型一体構造(傘型)
・大型化に不向き
・地上試験が困難
※インドネシアが保有
※米国ロッキード・マーティン社製通信衛星

伝統工芸と最新技術の融合!メッシュ型アンテナがスゴイ!

「きく8号」は効率的な通信を実現するために、とても細い金属の糸で編まれたメッシュ型アンテナを採用しています。 しかし、金属の糸は力を加えると簡単に切れてしまうため、編みこむことが非常に難しい点が問題でした。 そこでプロジェクトチームは織物専門のメーカーに協力を依頼。 日本に古くから伝わる繊細で緻密な職人技が、大きなメッシュ型アンテナの開発を可能にしました。日本ならではの伝統工芸と最新技術の融合が、世界最大級の人工衛星アンテナを実現したのです。

衛星バスシステムの開発

世界の静止衛星開発状況をみると、通信容量の増大、複数ミッションの搭載等によるミッションペイロード重量の増加、大電力化、長寿命化(搭載推薬量の増加)の方向に向かっています。 このため今後の日本の宇宙活動を円滑に展開していくためには大型衛星バスの開発が不可欠です。「きく8号」では世界に比べてもなんら遜色のない3トン級まで対応可能な衛星バスの技術開発を行います。

「きく8号」で今後の宇宙活動に必要とされる多様なミッションに対応可能な世界最高水準の3トン級静止衛星バス技術を確立するため以下の技術開発を行いました。

(1) 衛星バス技術の一つの指標であるペイロード重量比(※1)40%を達成しています。そのために構体の軽量化を図っています。また開発スケジュール短縮のために構体をモジュール化し、並行作業が出来るようにしています。

※左から、推進モジュールとバスモジュールの結合、ペイロードモジュールの結合、アンテナタワーの結合

(2) 大電力化への対応(※2)として、電源バス電圧を従来の50Vから100Vに変更しています。
(3) システムの汎用性確保に有利な、MIL-STD-1553Bデータ・バス(※3)を採用しています。
(4) 国際的な相互運用性確保に有利な、CCSDDS(※4)勧告に準拠したパケット伝送を使用しています。
(5) 大電力化に伴う高発熱に対して、南北面連結ヒートパイプの採用により実効的な放熱面の拡大を図っています。
(6) フォールトレラント機能(※5)と搭載ソフトウエアを地上から書き直せる機能を持つ、故障に強い姿勢制御系としています。

上記のような「きく8号」で開発された新規技術はDS2000を原型とした衛星バスは、「ひまわり8号」にも採用され、今後商用衛星開発に活かされていく予定です。

※1 衛星の全重量に対してミッション機器の重量が締める割合。従来は約30%
※2 一般的に、発生電力6kWを超えるあたりから、電力損失の点から100Vバスが有利になる
※3 各機器間でテレメトリ・コマンドなどの情報を伝送する規格
※4 宇宙データシステム諮問委員会
※5 故障が発生しても、システムの機能が維持できるように自動的に対処する機能

仕様

「きく8号」の仕様・打上げ

設計寿命 衛星バス = 10年、ミッション機器 = 3年
軌道 静止衛星軌道(東経146度(暫定))
形状 展開アンテナを備えた長方形の構体
質量 約2800kg(静止衛星軌道上初期)
ペイロード質量 約1100kg
発生電力 7500W(3年後夏至)
姿勢安定方式 3軸姿勢制御方式
姿勢精度 ロール / ピッチ:+-0.05度、ヨー: +-0.15度
アポジエンジン 500N級
イオンエンジン 25mN級
打上げ年月日 2006年12月18日
打上げロケット H-IIAロケット11号機

関連情報

インタビュー

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