降水レーダ衛星(PMM) 画像

地球を見守る衛星

開発中

降水レーダ衛星(PMM)

Precipitation Measuring Mission

プライムメーカ:
日本電気株式会社

ミッション

降水レーダ衛星(以下、PMM※1)は、宇宙から地球の雨や雪を測るミッションとして、JAXA、NASA(米国)、CNES(フランス)が協力して開発を進めている地球観測衛星です。PMMで得られたデータは「水」に関わる世界の気象や防災情報の高度化などに使われる予定です。
2014年2月に打上げられた全球降水観測(GPM※2)計画主衛星搭載二周波降水レーダ(DPR)を発展・継承したKu帯ドップラー降水レーダ(KuDPR)を搭載する衛星開発プロジェクトとして、PMMプロジェクトは立ち上がりました。日本がKuDPRと衛星本体を開発し、フランスが開発するマイクロ波放射計を搭載して、米国が打上げを担当します。
衛星本体とKuDPRの設計・製造は日本電気株式会社が担当しています。

PMMによる三次元降水観測イメージ図

※1 PMM:Precipitation Measuring Mission
※2 GPM:Global Precipitation Measurement

AOSミッションとコンステレーション

AOSミッションのアーキテクチャ全体

上図はNASAが主導して計画している全地球的な大気観測システム(AOS※3)ミッションのアーキテクチャを表しています。(2024年5月現在)
AOSのアーキテクチャ全体としては、傾斜軌道(Inclined Orbit)と極軌道(Polar Orbit)に複数台の衛星を投入し、その中でPMMは、傾斜軌道でNASA衛星(AOS Storm Smallsat)とのコンステレーション※4を行うことになります。PMMが搭載するKuDPRは、降水の三次元構造を観測するとともに世界初の衛星からの降水粒子のドップラー速度観測を実現し、気象予報や洪水予測の精度向上が期待されています。また、CNESのマイクロ波放射計が、PMMとNASA衛星のそれぞれに搭載されており、この二機でお互いの位置を調整しながら航行することで、同一地点の時間差観測を可能にし、大気の鉛直構造やその変動についての新たな情報を提供する事が期待されます。
加えて、JAXAが傾斜軌道のコンステレーションをリードし、降水観測に留まらない包括的な大気観測を通して、気象・気候モデル改良に貢献することにより、気候変動対策分野での日米協力のシンボルになることを目指しています。

※3 AOS:Atmosphere Observing System
※4 複数の人工衛星を協調して動作させる運用方式

PMMの形状や搭載パーツについて

Ku帯ドップラー降水レーダ(KuDPR)
Ku帯という周波数の電波を雨や雪に照射して、降水の分布を立体的に観測します。
マイクロ波放射計
降水粒子に散乱されるマイクロ波を感知して、雨の強さを測ります。CNESが開発します。
太陽電池パドル
軌道上において太陽光を電池エネルギーに変換し、衛星に必要となる電力を供給します。

技術

  • 雨・雪の降っている量を高さごと(立体的)に観測!
  • 雨の分布だけでなく動きがわかる!
  • 雨粒の動きを正確に捉えるDPCAがスゴイ!

PMMで使われている技術のここがスゴイ

①雨・雪の降っている量を高さごと(立体的)に観測!

KuDPRを用いて雨や雪を立体的に観測することで、例えば地上での雨の強さを精度よく、測ることができます。地上では雨が降っていても、気温の低い上空では雪であることも多いため、降水の立体構造を正確にとらえるには雪も含めた観測が重要です。KuDPRでは受信機の高感度化により、今まででは観測が難しかった上空の弱い雪についても観測することができます。それらのデータを用いて、降水粒子や降水タイプに関する理解を深めることで、地上での降水量の推定精度向上につなげることを目指しています。
また、しずく(GCOM-W)などに搭載されているマイクロ波放射計では、鉛直方向に積算された雨の量を観測するため、以下のような二つの降水システムを観測した場合、左右の地上降水量の差を見分けることは難しいです。一方、KuDPRの三次元観測により、粒子の分布を立体的に把握できるため、地上・上空など様々な高さでの雨の強さを判別できます。さらに、その情報を活用して、マイクロ波放射計の降水推定を向上させ、衛星全球降水マップ(GSMaP)を高精度化します。

雨粒の成長イメージ図

雨の分布だけでなく動きがわかる!

KuDPRは、衛星搭載用降水レーダとして世界初のドップラー速度計測機能付きレーダです。これにより、全地球上で降水の3次元分布だけでなく雨粒の上昇や下降などの動きを知ることができます。すなわち、降水強度や豪雨に伴う上昇気流を、海上を含めた全球で推定可能となり、台風等の予測精度の向上につながります。
なお、同じくドップラー観測を行う雲エアロゾル放射ミッションEarthCARE/CPRとの違いは、観測する対象です。CPRは雲粒を対象にしているのに対して、KuDPRでは雨粒(雲粒より約100倍大きい水滴)を対象にしています。さらに、NASA AOSミッションでの国際協力で、エアロゾル(気体中に浮遊する微小粒子)から雲・降水に至るまでの統合的な観測が可能となります。

雨粒の動きを正確に捉えるDPCAがスゴイ!

KuDPRは約2m四方のアンテナ2枚で構成されており、DPCA(Displaced Phase Center Antenna)方式を採用します。DPCA方式によって、2枚のアンテナで交互に電波を受信することで、ドップラー速度測定の誤差となる、衛星の移動による効果を除去した観測を行うことができ、それにより、雨粒の動きがより高精度にわかります。KuDPRはDPCA方式により、高精度なドップラー速度の測定とともに、TRMM/PRやGPM/DPRで用いた電子走査による広域観測を両立します。

GSMaPについて

JAXAは全世界の降水を1時間・緯度経度0.1度の時空間分解能で推定する衛星全球降水マップ(GSMaP)を開発し、定常的にデータ提供を実施しています。軌道上で運用している世界各国のマイクロ波放射計や静止気象衛星の赤外イメージャ・地上雨量計の観測データを用いて降水量を推定していますが、2014年に打ち上げたNASA/JAXAが共同開発したGPM主衛星搭載のDPRは複数の衛星から推定された降水量の基準を与える役割を担っています。GSMaPはJAXAのHPで公開されており、世界中の降水をウェブサイトでリアルタイムにどなたでも見ることができます。降水監視・洪水予測・干ばつ監視・農業等の様々な分野でGSMaPの利用が進んでおり、データを利用する登録ユーザは世界 150 カ国に広がっています。
PMMで得られたデータは、GPM主衛星が果たしていた役割を引き継ぎ、さらにKuDPRの新しい特徴である、高感度化やドップラー速度計測機能がGSMaPの降水推定に利用され、性能向上に役立つことが期待されています。

衛星全球降水マップ(GSMaP)のウェブサイト「世界の雨分布速報」より

仕様

PMMの仕様・打上げ

衛星名 PMM GPM(参考:打上げ当時)
軌道 太陽非同期、傾斜軌道 太陽非同期、傾斜軌道
軌道傾斜角 約55度 約65度
軌道高度 約407km(暫定) 約407km
サイズ 7.2m × 15.0m × 4.1m 6.5m × 13.0m × 5.0m
質量 約2.7トン 約3.9トン
ミッション機器 ・Ku帯ドップラー降水レーダ(KuDPR)
・CNESマイクロ波放射計
・二周波降水レーダ(DPR):
 Ku帯レーダ(KuPR)
 Ka帯レーダ(KaPR)
・NASAマイクロ波放射計(GMI)
水平分解能 約5km 約5km
距離分解能 通常観測:約250m
高密度観測:約500m
ドップラー観測:約500m
KuPR:約250m
KaPR:約250m
    約500m(高感度観測ビーム)
設計寿命 5年 3年2ヶ月
打上げ年月日 2028年度以降 2014年2月28日
打上げロケット 米国が対応 H-IIAロケット23号機

地球を見守る人工衛星

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暮らしを支える人工衛星

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衛星プロジェクト ストーリー

人工衛星への熱き想い!

人工衛星は機械ですが、人工衛星を研究開発して運用するために、JAXAの宇宙開発の現場ではプロジェクトチームとして多くの人が協力して働いています。ここでは衛星プロジェクトを支えるストーリーを紹介します。ミッション遂行に向けた熱い想い、大変な話、感動する話、面白エピソード、普段聞けない裏話などなど。

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