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2025.01.09(木)

「令和6年度 気候変動適応の研究会 研究発表会・分科会」でJAXAの衛星観測情報の利用について発表しました

(1)気候変動適応の研究会について

2024年12月17日東京の航空会館ビジネスフォーラムで「令和6年度 気候変動適応の研究会 研究発表会・分科会」が開催され、JAXA 地球観測研究センターの沖 理子センター長/代理:石澤 淳一郎技術領域主幹が「気候変動適応へのJAXA衛星観測情報利用」と題して発表しました。また同研究会では他の研究機関からもJAXA衛星観測データを活用した研究が発表されました。

研究発表会での発表の様子

「気候変動適応に関する研究機関連絡会議」は気候変動適応法及び計画に基づいて、関連する研究機関の連携協力をより一層進めることで気候変動適用研究を国レベルで進展させて、関連する科学的情報を充実・強化することで、国や地方公共団体が気候変動適応に関する「高温耐性の農作物品種の開発・普及」「魚類の分布域の変化に対応した漁場の整備」「堤防・洪水調整施設等の着実なハード整備」「ハザードマップ作成の促進」「熱中症予防対策の推進」などの施策や活動を推進するために設けられた会議です。
気候変動は地球規模かつ長期間における変化の把握が重要であり、JAXAではその貢献のため地球観測衛星の開発、運用を続けており、「気候変動適応に関する研究機関連絡会議」にも構成員として参加しています。

本会でも、JAXA衛星観測情報を活用した気候変動適応への取組みについて複数の発表がありました(以下、リンク先で発表資料を閲覧可能です)。

「インフラ分野における衛星活用リモセン技術の社会実装に向けた検討状況」
吉田 邦伸氏(国土技術政策総合研究所)資料 
河川、砂防、ダム等の被災時や復旧時の陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)活用等。

「全国の海草・海藻藻場の分布・CO2吸収量の推定」
茂木 博匡氏(国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 港湾空港技術研究所)資料 
我が国の温室効果ガス排出量における海草・海藻藻場による二酸化炭素吸収量推定に気候変動観測衛星「しきさい」(GCOM-C)を活用。

「気候変動適応に貢献する北極域データアーカイブシステム」
矢吹 裕伯氏(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構国立極地研究所)資料
北極・南極域のデータ(海氷域密接度、積雪深、海水面変動)作成において水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W)を活用。

シンポジウムの講演資料は以下に公開されています。
参照:令和6年度 気候変動適応の研究会 研究発表会・分科会

(2)「気候変動適応へのJAXA衛星観測情報利用」

JAXAの研究発表では「気候変動適応へのJAXA衛星観測情報利用」(資料)と題してJAXAの地球観測衛星で観測したデータを使用した様々なデータサイトを紹介しました。発表後の質疑応答では、地方自治体の気候変動適応センターの方から、夜間の地表面温度情報についてご質問があり、「しきさい」の衛星観測情報を基にした「JASMES Image Analyzer」をご紹介しました。

地域の気候変動適応に活用いただきたい情報としてご紹介した「GEE版 内湾モニタ」と「JASMES Image Analyzer」をこちらでもご紹介します。

この二つのデータサイトは250m分解能(※1)と比較的高い分解能のデータを使用しているサイトです。

(※1)分解能:画像の1ピクセルが地表面何メートルかを表す衛星のセンサの性能を表すもの 250m分解能の場合、画像の1ピクセルが地表面の250m×250mに相当する

GEE版 内湾モニタ

GEE版 内湾モニタは「しきさい」(GGOM-C)が250m分解能で観測したデータを用いて、東京湾など国内15か所の懸濁物質濃度(TSM)、クロロフィルa濃度(CHLA)、海面水温(SST)、大気上端放射輝度の3バンド合成画像(RGB)で提供しているサイトです。

懸濁物質濃度やクロロフィルa濃度のデータは、「海水の清浄度」など内湾の環境状態の監視や、改善のための対策検討に活用されますが、魚貝類のえさとなるプランクトンの豊富さとも相関します。海面水温はこれら海の生き物(魚や貝、海苔などの海藻等)の活動や生育に影響するので、水産業における漁場予測や養殖場管理などに役立てることができます。

港湾は「GEE版 内湾モニタ」、それ以外は次の「JASMES Image Analyzer」がご活用いただけます。

JASMES Image Analyzer

JASMES Image Analyzerは全球の気候変動に係る諸物理量(地表面温度、海面水温、クロロフィルa濃度など)をマップ表示し、自由に拡大・スクロールでき、時系列グラフも表示できるサイトです。 全球は5km分解能で、日本周辺は250m分解能で観測したデータを提供しています。

SGLI気候値(※2)はJAXAの衛星「しきさい」と海外衛星による長期観測データをもとに作成した平年値です。
近年、世界中で記録的な高水温が観測され、日本沿岸域においても養殖水産物が突然死んでしまう斃死が問題になっています。沿岸漁業・養殖業などの気候変動適応対策では海面水温の過去平均情報としてご利用頂けます。
(※2)気候値作成方法:NASAのMODISプロダクトの2000-2019年の平均と、SGLIとMODISで観測期間が重複している2018-2022年のSGLI-MODIS間差から作成

(3)「JAXA Earth API」「生成AI」を使った今後の取組み

JAXAでは2022年6月よりJAXA Earth API を無料で公開しています。PythonとJavaScriptに対応したAPIで、JAXAが公開している地球観測データの一部をAPI経由で利用することができます。
数値データで入手できるため、任意の可視化処理や統計処理を行うことができます。
現在、毎月3~10万件ほどのアクセスがあり、IT系企業を中心に商用利用実績も増加しています。

また、現在JAXAではJAXA Earth API を基盤とした「JAXA Earth Dashboard」を開発しております。
日頃、衛星データを使用されていない専門家以外の方に分かりやすく使いやすいサービスの実現によって、さらなるデータ利用拡大を目指しています。
さらに、生成AIとの連携も試行しており、自然言語を入力として、自動でデータを取得・計算して解説できるものを目指しています。
より皆さまに使いやすいサービスを提供できるよう開発を進めておりますので、ご期待ください。

2025.01.09  文:松﨑

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