夢の衛星は実現可能?
衛星の能力いろいろ
ある衛星では観測できない物理量も、他の衛星では観測出来たりするように、現在運用されている地球観測衛星にはそれぞれに得意な分野と不得意な分野があり、それぞれの長所短所を補い合っています。では、様々な物理量を高頻度かつ高解像度で広い範囲を一度に観測できる、我々の理想をすべて叶えてくれる一機の夢の衛星を作ることは可能でしょうか?
上の図では、光学センサを例にとって衛星のさまざまな性能(スペック)について、ある性能を上げるために他の性能を下げる必要があること(トレードオフ関係)を示しています。
例えば、空間分解能(解像度)の高い観測を行うには、軌道高度を下げてより近くから地球を観測するなどの方法が考えられますが、一般に高度が低くなると衛星から一度に見える範囲(視野)が狭くなるため、観測頻度が低下し、時間分解能を同時に向上させることは難しくなります。
他にも大型の望遠鏡を用いるなど、センサそのもののサイズを大型化し解像度を上げる方法もありますが、電力消費量が大きくなるため衛星バスへの負荷が大きくなり、継続的な観測が行えなくなるリスクが高くなったり、重量・体積の増加によりロケットへの搭載が難しくなったりします。
このように、一度にすべての要求を満たす衛星を実現することは極めて難しく、それ故に複数の地球観測衛星がそれぞれの短所を補い合いながら観測を続けているのです。
夢の衛星に近づくために
トレードオフ関係にあるスペックを同時に向上させるための技術開発も行われています。例えば、空間分解能と時間分解能を同時に向上するため、JAXAでは対象領域の常時観測が可能な静止軌道に非常に精密な大型望遠鏡を配置する研究開発に取り組んでいます。また民間企業などでは、一機の夢の衛星を開発するのではなく、一機当たりのコストが安い小型衛星を大量に低軌道に投入することで、空間分解能を維持したまま時間分解能を向上させる検討などが進んでいます(小型衛星コンステレーション)。夢の衛星に近い技術の実現は、すぐそこまで来ているのかもしれません。