地球観測データが届けられるしくみ
宇宙にある地球観測衛星から、電波を受け取る設備である地上局へ、観測したデータが届けられる仕組みについて説明します。
宇宙と地上局の通信
衛星と地上局との間では、地上でも使われている電波を利用した通信を行っています。
電波とは電気・磁気のエネルギーを持った振動であり、光と同じ速さで進みます。
衛星と地上局には、この電波を発する装置と受け取る装置が存在します。通信する相手の電波だけをキャッチできるよう、お互いに向きを合わせたり、通信する時間帯を決めたりします。そうして、宇宙から観測した地球のデータや、衛星の状態に関するデータを地上局に送信しているのです。
地上局で受け取ったデータは、そのデータを扱う人やシステムに対して送信されます。衛星の状態を見た人が異常に気づいたら、反対に地上局から衛星に向けての命令を送信することもあります。
また、地球を観測したデータが地上局に届けられた場合、たいていはそのままだと人が見てもよくわからないデータになっています。これを別のシステムが処理することで、意味のあるデータとしてJAXAから、皆さんに提供しています。
通信の方法について
衛星はある一定の周波数(1秒間に振動する回数)を持った電波を使って、地上局との通信を行っています。そこにはいくつか理由があります。
第一に、衛星と地上局は通信できる時間が限られていることです。
地球観測衛星の速さは約8km/秒で、約100分で地球を1周する速度です。言い換えると、一度通信をした後は、同じ場所で通信を行うまでに80分かかります。衛星が次の観測を行うには、衛星のデータを全て送信し、古いデータを削除する必要があります。そのため、一度の通信でなるべく多くのデータを送信する必要があります。
送信できるデータ量は周波数に比例します。衛星と地上の通信に使う電波の周波数は4~20ギガヘルツ(1秒間に40~200億回振動する)であるため、大量のデータを送信できます。
もしも一度の通信で全データを送信しきれない場合は、海外の地上局を利用するなど、衛星のデータを全て受け取ってしまうための工夫が必要です。
周波数を大きくして送信できるデータを増やすことはできないのでしょうか。そこには第二の理由として、障害物の影響があります。周波数は高ければ高いほど、直進しやすくなるという性質を持っています。通信をするうえで、目的の場所にまっすぐ進む性質は大事です。ただその性質が強いと、たとえば雨や雪が降った場合、妨害されて通信ができなくなるといったリスクもあります。周波数を抑えることで、雨や雪を避けて電波が進み、悪天候でも地上との通信を可能にしています。
また電波は、法によって使ってもよい周波数が決められています。これは国同士でルールを決めているので、これに反するようなことはできません。こういった理由から、衛星の通信は今日まで、大きく形を変えることなく維持されています。