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ミッション
宇宙から、地球の水と温室効果ガスを観測
近年、異常気象による災害が激甚化しており、その原因と考えられる気候変動の把握は社会への影響予測と対策に繋げるためにも重要な取り組みです。この取り組みに貢献すべく、JAXAは、「温室効果ガス・水循環観測技術衛星」(GOSAT-GW※1)の開発を進めています。

AMSRシリーズとGOSATシリーズのハイブリッド衛星
GOSAT-GW(ごーさっと じーだぶりゅ)は、AMSR(あむさー)シリーズと呼ばれる海面水温など水循環に関する「高性能マイクロ波放射計:AMSR」とGOSAT(ごーさっと)シリーズと呼ばれる温室効果ガスを観測する「温室効果ガス観測センサ:TANSO」が同時搭載されたハイブリッド衛星です。
2012年に打上げられた「しずく」(GCOM-W※2)の水循環変動観測ミッション、 2009年に打上げられた「いぶき」(GOSAT※3)及び2018年に打上げられた「いぶき2号」(GOSAT-2※3)の温室効果ガス観測ミッションを発展的に継続するものです。
GOSAT-GWでは、後継センサである高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)、環境省からの委託によりJAXAが開発する温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)を搭載しています。 衛星及び各搭載センサについては、主に三菱電機株式会社が開発を担っています。
※1 GOSAT-GW
:Global Observing SATellite for Greenhouse gases and Water cycle
※2 GCOM-W(しずく)
:Global Change Observation Mission-Water
※3 GOSAT (いぶき)、GOSAT-2(いぶき2号)
:Greenhouse gases Observing SATellite

ミッションマークでは、自然環境アイコンと、水循環アイコンをシンボリックに示し、GOSAT-GWの貢献分野を一目でイメージできるものとしました。
JAXAサテナビチャンネルでもゆる~くご紹介しておりますので、是非ご覧ください。
関連情報:【人工衛星イラストのゆる~い解説 #4】作者イチオシの進化系ハイブリッド衛星!
GOSAT-GWの形状や搭載センサについて

①高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)
(Advanced Microwave Scanning Radiometer 3)
高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)は、地表や海面、大気などから自然に放射されるマイクロ波を観測するセンサです。「しずく」に搭載されたAMSR2から観測可能な波長帯が増強され、降雪や上層の水蒸気の観測が可能になります。
②温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)
(Total Anthropogenic and Natural emissions mapping SpectrOmeter-3)
環境省からの委託によりJAXAが開発を進めている温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)は、「いぶき2号」に搭載されたTANSO-FTS-2※4の後継センサです。 TANSO-FTS-2で採用していたフーリエ干渉型分光方式から新たに回折格子型分光方式を採用することで、二酸化炭素(CO2)やメタン(CH4)等を空間的に詳細化した観測が可能になります。 またTANSO-3では新たに、二酸化窒素(NO2)の観測も行います。
※4 TANSO-FTS-2:Thermal And Near infrared Sensor for carbon Observation – Fourier Transform Spectrometer-2
AMSR3のミッション
- 水循環変動の把握と予測
気候変動に伴う水循環変動を把握し、社会生活への影響予測と対策に役立てる。 - 実利用分野への社会実装
- 気象
気象庁や世界の気象機関において、予測業務にAMSR3データが定常的に利用され、台風や集中豪雨などの予測精度向上に貢献する。 - 水産
関連情報:衛星利用分野 農林水産業
海象・気象情報サービス「エビスくん」での海面水温情報の提供 - 航行支援
海氷密接度や海面水温の情報を提供し、船舶の安全運航に関わる海状・海氷情報作成や最適航路の選択に貢献する。
関連情報:海洋状況把握(MDA)での衛星データ利用分野 「北極海航路の開発への貢献」
- 気象
TANSO-3のミッション
- 二酸化炭素の全大気温室効果ガスの月別平均濃度の監視
1850~1900年と比較して、2011~2022年の地球の気温は1.1℃上昇しています。2100年にかけて複数の将来シナリオが予測されていますが、全てのシナリオで上昇が予想されており、シナリオによっては4~5℃の上昇が予測されています。
現在の状況を正確に把握し、データを蓄積していくことでより精度の高い将来予測につながります。 - 国別人為期限温室効果ガス排出量の検証
「パリ協定」に基づき、先進国・途上国問わず、温室効果ガス排出削減に向けた取り組みを行っており、温室効果ガスの排出量は各国により国連に報告されています。それらの値と衛星の観測データによる推定値の差を調べ、研究されています。各国が報告した値を複数の観点で検証を行うことは非常に重要なことです。 - 温室効果ガスの大規模排出源(都市圏、発電所、永久凍土など)のモニタリング
TANSO-3の精密観測モードでは都市圏や発電所、永久凍土などの温室効果ガスを大量に排出する地点を90km2の領域を最大90箇所程度3日に1回観測することでモニタリングしていきます。
GOSAT-GWの観測データが利用できるようになるまで
GOSAT-GWは2025年度に打上げを予定しています。ロケット打上げ、衛星を分離した後は、おおよそ7か月かかけて、衛星の状態を確認した後に皆さまに観測データをご提供いたします。
衛星の状態は順次お知らせいたします。
技術
- AMSRシリーズによる20年以上にわたる水情報の継続観測と観測チャネルの追加
- TANSO-3による広範囲・高精度な温室効果ガスの観測
AMSR3による20年以上にわたる水情報の継続観測と観測チャネルの追加
高性能マイクロ波放射計AMSRシリーズは2002年より20年以上にわたり、「地球上の水を観測」してきました。海面水温、海上風速、土壌水分量、積雪深、海氷密接度などの観測を行い、これらのデータは、気象予報、漁業、航行支援、気候変動の把握など、幅広い分野で貢献しています。
<AMSRシリーズの利用事例>
- 天気予報
- 降水予測精度向上
- 台風やハリケーンの進路予測の改善
- 水産分野
- 海面水温と漁場の関係を活用した遠洋漁業への情報提供
具体的な利用事例はこちら
<AMSR3の追加機能>
マイクロ波放射計は、地表面や大気から放射される微弱なマイクロ波を測定します。地表面や海面、雲の中の水に関する物理量を、雲を透過して観測することが可能です。夜間の観測も可能なため、天候や昼夜を問わず常時観測できるという特徴があります。
GOSAT-GWに搭載される高性能マイクロ波放射計3(AMSR3)は、「しずく」に搭載されたAMSR2の後継センサであり、マイクロ波放射計として世界トップの性能と機能の実現を目指します。 AMSR3では次の機能が追加されます。
- 観測チャネルの追加・既存チャネルの分解能の向上
- 166GHz帯、183GHz帯の観測チャネルが追加
AMSR2では雪や氷で覆われた地表面での降雪を観測することが難しかった為、北極や南極といった常に雪や氷で覆われているような高緯度の場所の降雪ができていませんでしたが、166GHz帯、183GHz帯が追加されることで、高緯度の降雪量・降水量が観測できるようになります。
それに伴い、地球温暖化に伴う海面水位上昇の予測精度向上への貢献が期待されています。
- 166GHz帯、183GHz帯の観測チャネルが追加

- 183GHz帯の観測チャネルが追加
高度4~7kmという高い高度の水蒸気を観測することができるようになります。これらデータを数値気象予報に組み込むことにより、豪雨・台風等の範囲や進路、盛衰の予報精度が向上します。

- 166GHz帯、183GHz帯の5km分解能
166GHz帯、183GHz帯は5km分解能が採用されている為、AMSR2よりもより鮮明に観測することができます。それにより北極海の海氷の状況をより細かく把握することができ、氷の隙間を運行する北極海航路の運航計画立案に寄与します。 - 10GHz 輝度温度分解能の向上
海面水温の高解像度化することで、AMSR2では沿岸から100km以遠の海水温でなければ観測できませんでしたが、AMSR3では20km以遠が観測できるようになることで、今までカツオ・マグロ等の沖合・遠洋漁業での漁業利用から大陸棚周辺(沿岸から約20km以遠)でのイワシ・サバ・アジなどの漁場探索に貢献することができます。
衛星名 | しずく(GCOM-W) | GOSAT-GW |
ミッション機器 | 高性能マイクロ波放射計2 (AMSR2) |
高性能マイクロ波放射計3 (AMSR3) |
10 GHzの分解能 | 50km | 30km |
観測できる沿岸からの距離 | 100km以遠![]() ※赤点●:サバ・イワシの2014年漁場位置(出典:JAFIC) |
20km以遠![]() |
<AMSRシリーズのデータの活用>
AMSRシリーズのデータは、以下で閲覧可能です。
2002年6月~2011年10月はAMSR-Eで観測したデータが、2012年7月以降はAMSR2のデータが使用されています。AMSR3のデータも今後追加される予定です。
AMSR地球環境ビューア
操作ガイド
降水量や海面水温などの水循環に関するデータを可視化できるサイトです。
準リアルタイム極域環境監視モニター
操作ガイド
極域(北極・南極)のデータを表示することができるサイトです。海氷面積を画像やグラフとして表示することができます。
TANSO-3による広範囲・高精度な温室効果ガスの観測
GOSAT-GWに搭載される、温室効果ガス観測センサ3型(TANSO-3)は、「いぶき2号」に搭載されたTANSO-FTS-2の後継センサであり、地球上の温室効果ガスを広範囲・高精度に観測します。
TANSO-3は、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)に加え、新たに二酸化窒素 (NO2)を観測します。NO2は化石燃料の燃焼によりCO2とともに排出されるため、これらを同時に測定することで、人為起源CO2の排出源特定や排出量の推定精度向上が期待されます。
<GOSATシリーズのデータの活用>
▸ JAXAより公開している「いぶき」(GOSAT)および「いぶき2号」(GOSAT-2)のデータ利用についてはこちら。
・GOSAT/GOSAT-2 EORC Monthly Global GHGs Map

GOSAT/GOSAT-2 EORC Monthly Global GHGs Mapは「いぶき」「いぶき2号」が観測した月毎CO2の量をマップ上に示したデータが閲覧できます。夏には北半球で二酸化炭素が光合成によって多く吸収されている様子や、二酸化炭素が徐々に増えている様子を確認することができます。 またメールアドレスを登録することで、具体的な数値となった観測データもダウンロードすることができます。
▸ 国立環境研究所で公開されている「いぶき」(GOSAT)および「いぶき2号」(GOSAT-2)のデータはこちらから閲覧・ダウンロード可能です。
▸ GOSATおよびGOSAT-2のデータ利用についてはこちら。
・GOSAT Data Archive Service(国立環境研究所)
・GOSAT-2 Product Archive (国立環境研究所)
<GOSATシリーズの紹介>
▸ GOSTAシリーズの紹介動画(製作:環境省)
GOSAT、GOSAT-2による観測成果や、GOSAT-GWへの期待について紹介しています。

仕様
GOSAT-GWの仕様・打上げ
衛星名 | GOSAT-GW | <参考> | |
GOSAT-2(いぶき2号) | GCOM-W(しずく) | ||
ミッション 機器 |
高性能マイクロ波放射計3 (AMSR3) 温室効果ガス観測センサ3型 (TANSO-3) |
温室効果ガス観測センサ2型 (TANSO-FTS-2) 雲・エアロソルセンサ2型 (TANSO-CAI-2) |
高性能マイクロ波放射計2 (AMSR2) |
衛星質量 | 約2.6t | 1.8t | 約2t |
発生電力 (EOL) |
約5,300W | 5,000W | 3,880W以上 |
設計寿命 | 7年以上 | 5年 | 5年 |
軌道種別 | 太陽同期準回帰軌道 | 太陽同期準回帰軌道 | 太陽同期準回帰軌道 |
軌道高度 | 666km (GOSAT(いぶき)と同様) |
613km | 699.6km |
回帰日数 | 3日 | 6日 | 16日 |
地方太陽時 | 昇交点通過地方太陽時: 13:30±15分 (GCOM-W(しずく)と同様) |
降交点通過地方太陽時: 13:00±15分 |
昇交点通過地方太陽時: 13:30±15分 |
打上げ 年月日 |
2025年度(予定) | 2018年10月29日 | 2012年5月18日 |
関連情報
・GOSAT-GWシンポジウム(2024年3月13日)
・AMSRシリーズ GOSAT-GW紹介ページ
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地球を見守る人工衛星
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暮らしを支える人工衛星
通信を行ったり、測位(自分の位置を知る)を行ったりするための人工衛星です。新しい技術開発をするための人工衛星も作っています。
衛星プロジェクト ストーリー
人工衛星への熱き想い!
人工衛星は機械ですが、人工衛星を研究開発して運用するために、JAXAの宇宙開発の現場ではプロジェクトチームとして多くの人が協力して働いています。ここでは衛星プロジェクトを支えるストーリーを紹介します。ミッション遂行に向けた熱い想い、大変な話、感動する話、面白エピソード、普段聞けない裏話などなど。


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