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地球を見守る衛星

開発中

SAMRAI衛星

超広帯域電波デジタル干渉計衛星

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ミッション

革新的なマイクロ波観測により、新たな衛星利用を拓く

「超広帯域電波デジタル干渉計(SAMRAI)衛星」(SAMRAI(Scanning Array for hyper-Multispectral RAdiowave Imaging)=サムライ)は、海面・大気などから自然に放射される微弱なマイクロ波や船舶等が発射する人工電波を、①超広帯域アンテナ技術、②超広帯域アンテナのアレイ化(*1)技術、③超高速AD変換技術の3つの新規技術を組み合わせることで、幅広い周波数(超広帯域)のマイクロ波を高周波数分解能で広域に同時観測可能な革新的な衛星搭載マイクロ波観測センサ「SAMRAI」を搭載した小型の実証衛星です。
(*1) 複数のアンテナを配置して組み合わせ、一つの大きなアンテナのように機能させる技術。

光学センサの一種として、光の広い波長領域を数百チャンネルに細かく分けて観測を行うハイパースペクトルセンサがありますが、SAMRAIはマイクロ波版のハイパースペクトルセンサと言えるでしょう。SAMRAIは1~40GHzのマイクロ波を約3000チャンネルに分けて同時観測が可能です。

地球上のさまざまな自然現象の変化にはマイクロ波の放射が伴っており、これを測定することで、海面水温、海上風速、水蒸気量などを、雲を透過して観測することが可能です。夜間の観測も可能なため、天候や昼夜を問わず常時観測できるという特徴があります。これまでJAXAが開発・運用してきた衛星搭載マイクロ波放射計による観測では、通信電波などの人工電波が混入することにより引き起こされる観測データの欠損が大きな課題となっていました。この課題の克服に向けて、JAXAは超広帯域かつ高周波数分解能で観測可能な次世代のマイクロ波観測技術の研究開発を進めてきました。

この革新的なマイクロ波観測技術を適用したSAMRAIを実現することで、自然由来電波や人工電波を宇宙から高頻度かつ高精度に様々な周波数で細かく観測することができるようになり、線状降水帯・台風予測などの気象防災分野、船舶検知などの海洋状況把握分野、海上風況の把握が重要となる洋上風力発電分野、海面水温等の情報で漁場探索を行う漁業分野など、様々な分野における社会課題の解決やDXの実現などに対する不可欠なツールとしての貢献が期待されています。

これらの社会ニーズに対応し、安心安全な海洋デジタル未来社会の実現に貢献するため、JAXAは、JST未来社会創造事業において、この次世代のマイクロ波観測技術と、同技術を適用したSAMRAI衛星の研究開発を進めています。

SAMRAI衛星は、超広帯域アンテナ技術、超広帯域アンテナのアレイ化技術、及び超高速AD変換技術を適用することにより、海面・大気などから自然に放射される微弱なマイクロ波や船舶等が発射する人工電波を、超広帯域に高周波数分解能で広域に観測することができます。また、超広帯域アンテナのアレイ化技術により、展開式のフェーズドアレイアンテナ(PAA)を実現し、電気的な信号処理による指向制御や高空間分解能化を実現するとともに、小型化が可能となります。将来的に、SAMRAI衛星の成果を適用した、従来と比べて安価な小型衛星を複数機、軌道上に投入することで(コンステレーション化)、これまで実現が困難だった高頻度なマイクロ波観測を実現することができます。また、SAMRAIの研究開発成果を適用した大型の超広帯域マイクロ波放射計を実現すれば、全球の超広帯域マイクロ波観測による、これまでになかった観測データを用いた地球科学等の推進も期待できます。

安心安全な海洋デジタル未来社会の実現への貢献

将来的にSAMRAIを搭載した複数の衛星による高頻度なマイクロ波観測により、雲水量、降水量、水蒸気量、海上風速、海面水温、海面塩分等の自然由来電波や、船舶が発信する電波などの人工電波情報を高頻度に高精度に衛星から観測することができるようになり、様々な分野での価値創出が期待されています。2027年度に打ち上げ予定のSAMRAI衛星では、技術実証を行うとともに、想定される利用分野における利用実証を行う予定です。

気象・防災分野では、雲の下でも観測が可能なマイクロ波観測の強みを活かし、海上の水蒸気量、海上風速、海面水温などの情報を高頻度に把握することで、激甚化・高頻度化する線状降水帯や台風等の予測精度向上などへの貢献が期待されます。
海洋状況把握分野では、船舶が発信する電波の情報を漏れなく高頻度に把握することで、他の衛星観測情報と組み合わせて、海洋安全保障の確保や安心・安全な海洋活動に不可欠な不審船の検知・識別に貢献するとともに、海上風速等の情報により、海洋DXの実現において重要な気象・海象の把握・予測の高度化に貢献します。
洋上風力発電分野においては、発電所周辺の海上風速を面的に把握することで、洋上風力発電所の効率的・効果的な運用に不可欠な、将来的な風況予測の実現に貢献します。
持続可能な漁業分野においては、海面水温や海面塩分を雲の下でも高頻度に、従来よりも高空間分解能に把握することで、より沿岸部の漁業者も利用可能な漁場探索サービスの高度化に貢献します。

SAMRAI衛星の開発においては、JSTの未来社会創造事業のもと、開発の初期段階からSAMRAIの観測データを利用し、上記4分野の事業を展開する意欲を有する民間事業者の方々と、観測データのユースケース、衛星に対する要求事項や利用実証の項目について共同で検討を進めています。こうした事業者の方々と共に、SAMRAI衛星の研究開発成果を活用した事業化・社会実装の実現に向けた取組を進めています。  また、SAMRAI衛星による超広帯域かつ高周波数分解能のマイクロ波衛星観測データはこれまで世の中に無かったものであり、今後の検討・研究により、上記以外にも様々な利用方法が期待されます。SAMRAI衛星の実証成果を研究者や事業者の皆さんと共有し、様々な新しい利用の探索に取り組んでいきます。

技術

  • 超広帯域アンテナ技術
  • 超広帯域アンテナのアレイ化技術
  • 超高速AD変換技術

SAMRAI衛星で使われている技術のココがスゴイ!

SAMRAI衛星は、「超広帯アンテナ技術」、「超広帯域アンテナのアレイ化技術」、「超高速AD変換技術」を適用することにより、海面・大気などから自然に放射される微弱なマイクロ波や船舶等が発射する人工電波を、超広帯域に高周波数分解能で広域に観測することができます。また、フェーズドアレイアンテナの実現により、高空間分解能化や小型化・低コスト化が可能です。

①超広帯域アンテナ技術

超広帯域アンテナ技術とは、非常に広い範囲の周波数を同時に観測するためのアンテナ技術です。「帯域」とは、周波数の範囲のことを指します。クアドリッジフィードホーン(QRFH)や背面放射吸収型のSINUOUSアンテナなど、これまでも超広帯域アンテナは存在しましたが、JAXAは、従来型に比べて広帯域の1~40GHzにおいて一定のビーム幅を確保した観測が可能かつ、小型・薄型・軽量で衛星搭載に適している背面放射反射型のSINUOUSアンテナを新たに開発しました。

開発した超広帯域アンテナの概観

②超広帯域アンテナのアレイ化技術

この超広帯域アンテナを平板上に複数個並べ、一つの大きなアンテナとして機能されるアレイ化技術を開発し、電気的な信号処理で指向制御を行うフェーズドアレイアンテナを実現することで、広域(高度500kmで観測幅約1,000km)を従来のマイクロ波放射計に比べて高空間分解能に超広帯域(1~40GHz)で観測することが可能となります。フェーズドアレイアンテナは回転型のアンテナに比べ、展開機構によるアンテナの大型化が容易で高空間分解能化を実現しやすくなります。

超広帯域アンテナを複数並べたフェーズドアレイアンテナ(航空機搭載実験用)

③超高速AD変換技術

超広帯域アンテナで受信した1-40GHzのマイクロ波を、高周波数分解能なスペクトルデータとするには、受信したマイクロ波のAD変換(アナログ-デジタル変換)の高速化がカギとなります。SAMRAI衛星では、最新鋭のFPGAを用いて1秒間に280億回(28GSPS(*2))のサンプリングによる超高速のAD変換(アナログ-デジタル変換)処理技術を実現しました。
(*2)GSPS = ギガ・サンプル/秒

仕様

「SAMRAI衛星」の仕様

項目 仕様
サイズ 200kg級
搭載センサ 超広帯域電波デジタル干渉計(SAMRAI)
観測周波数 27MHz間隔で連続的に 1~40GHz
サンプリング速度 27.648GSPS (ギガ・サンプル/秒)
アンテナ数 12個でフェーズドアレイアンテナ(PAA)を構成
最大アンテナ間距離 2.3m
観測幅 1000km (高度500kmから観測する場合)
空間分解能 2km(35GHz)、7km(10GHz)、50km(1GHz)
※周波数に依存
設計寿命 1.5年以上
軌道 太陽同期軌道、高度約500kmを想定
打上げ 2027年度(予定)

基盤的データプロダクト

プロダクト 空間分解能(理論値) 標準プロダクト精度
輝度温度(1.2-40GHz) 周波数に依存 1.5K
(他マイクロ波放射計と重複する
観測周波数について)
人工電波(1.2-40GHz) N/A 位置同定±3km
海面塩分 50km ±1.0psu
(水温20ºC以上、10m/s以下)
海面水温 10-7km ±0.5 ºC
海上風速 2km ±0.8m/s
降水量(海上) 7km 相対精度で±75%
(相対精度=RMSE/平均)
雲水量(海上) 5km ±0.05kg/m2
水蒸気量(海上) 5km ±3.5kg/m2

観測領域・頻度

小型衛星(200kg級)であるため、電力などの制約から観測領域は日本のEEZ+αに限定される。

関連情報

「SAMRAI」衛星シンポジウム 「安心・安全な未来を創るマイクロ波衛星」 ~産学官連携が拓く、海洋デジタル未来社会と衛星観測ビジネス第3波~  (2024年10月17日開催)

「超広帯域マイクロ波計測技術で切り拓く未来社会 ~固定概念を打破し新たな価値を創造~」(2022年12月14日開催)

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人工衛星への熱き想い!

人工衛星は機械ですが、人工衛星を研究開発して運用するために、JAXAの宇宙開発の現場ではプロジェクトチームとして多くの人が協力して働いています。ここでは衛星プロジェクトを支えるストーリーを紹介します。ミッション遂行に向けた熱い想い、大変な話、感動する話、面白エピソード、普段聞けない裏話などなど。

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