お知らせ

2018.12.03(月)

地球観測衛星による雨及び雹データ等を活用したパナソニック社サイト「Rain Power Graph」が公開

〜JAXAが処理した衛星降水データを活用した、初の住宅関連プロモーション事例~

画像:プロフィール 松浦直人(まつうらなおと)

衛星データの民間利用推進を目的として、JAXAはパナソニック株式会社エコソリューションズ社に対し数種類の衛星データを提供。それらをもとに作られた同社の雨とい事業60周年記念サイト「Rain Power Graph」が公開されました。

サイトでは全国100地点の「気象に関する5つの指標(降雨量/瞬間降雨量/瞬間最大風速/降雪量/UVインデックス)」を同社が偏差値化。家が受ける気象の脅威に関する項目の全国偏差値を水滴グラフで確認できる仕様になっており、衛星データを「家」という視点で編集加工して閲覧できるようにした取り組みです。

JAXAが提供したデータは、全球降水観測計画(GPM(ジーピーエム))主衛星等を利用したGSMaP(ジーエスマップ)の過去10年分の降雨量データ、全球降水観測計画(GPM(ジーピーエム))主衛星搭載二周波降水レーダ(DPR(ディーピーアール))の2016年12月~2017年2月の雨雲中の雹含有量データ、及び陸域観測技術衛星「だいち」撮影画像です。同社は、サイト制作にあたっては、気象庁アメダスの観測データを併せて活用しています。

JAXA 松浦直人からのメッセージ

「人工衛星により得られる雨のデータが、民間企業により、暮らしの気象への適応のために活用されるのは新しい試みで、今後どういった発展を遂げるのか注目している」

――昨今の気候変動と世界を襲う異常気象についてJAXAとしての想い――

2018年の夏は、世界各地で記録的な猛暑が続きました。日本でも全国的に猛暑が続き、7月23日には埼玉県の熊谷市で、日本の観測史上最高となる41.1℃の気温を記録しました。地球温暖化は、集中豪雨や干ばつなどの極端な気象現象をもたらすと言われており、7月に西日本を襲った未曽有の豪雨により引き起こされた水害は、まだ記憶に新しいところです。日本の平均気温はこの100年間で1℃以上上昇し、今後もさらなる上昇が懸念されています。JAXAは、人工衛星により、日本のみならず世界中の雨や雲などの様々な要素をグローバルに観測し続けることで、気候変動メカニズムの解明に貢献するデータを提供していきたいと考えています。

――人工衛星の観測データの民間利用促進について――

JAXAの環境を観測する人工衛星の観測データは、気候予測モデルの精度改善や降水メカニズムの解明などの科学目的のために使われています。
これらの情報は、地球温暖化の状況や気候変動への影響を把握し、それを抑制するための科学的根拠として用いられています。
このようなことは、国際機関や国レベルの対応が求められることですが、影響を受ける我々は、温暖化やそれによってもたらされると言われている異常気象に向き合い、適応していかなければなりません。人工衛星により得られる雨のデータが、科学目的にとどまらずに、民間企業により、暮らしの気象への適応のために活用されるのは新しい試みで、利用者の皆様を含め、今後どういった発展を遂げるのか注目しているところです。

――今回のパナソニックとの協力事業の意義について――

今回、パナソニックさんからJAXAの観測データに注目いただいた事をきっかけとして、共同事業で「家に対する気象の脅威情報」をテーマとしたWebサイトを立ち上げていただきました。実は、一般の方が地球観測衛星のデータを目にする機会は少なく、JAXAがどういった人工衛星を開発・運用しているのか、世間的な認知度は高くありません。住宅という暮らしに身近なテーマを切り口として、宇宙に興味が薄かった方々に対してJAXAの人工衛星をPRできることは貴重な機会です。これを契機として、より一層民間企業での衛星データ利用が促進されればと考えております。

画像:プロフィール 松浦直人(まつうらなおと)

プロフィール 松浦直人(まつうらなおと)

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 第一宇宙技術部門 宇宙利用統括 兼務 地球観測研究センター長。
1986年慶應義塾大学工学研究科修了後、宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)へ入社。人工衛星の追跡管制、地球資源衛星1号(ふよう1号)の開発業務を経て、世界気象機関(WMO)へ派遣。その後、地球観測研究センターの計画マネージャなど20年近く地球観測関連業務に従事するとともに、予算、人事などの管理部門にも携わる。2013年4月から衛星利用推進センター長、2014年4月より地球観測研究センター長兼務。2015年4月より新規事業促進部長を経て、2018年7月より現職。

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