2020年12月11日(金)、JAXA寺田弘慈理事は、アメリカ海洋大気庁(NOAA)環境衛星データ情報局(NESDIS)ステファン・ボルツ長官とオンラインで会談し「全球衛星観測に係る協力に関する了解覚書」に署名しました。
多くの方は、地球観測衛星の国際協力と聞くと、衛星データの利用や研究のことを思い浮かべることが多いかもしれません。しかし、地球観測衛星における国際協力は、衛星そのものを海外の宇宙機関と一緒に開発することや、衛星から地球にある地上局にデータを送信し、そのデータを他の宇宙機関が処理して利用者に配信する活動にも広がっています。
今回締結された了解覚書の主な目的の一つは、2012年から実施しているJAXAの開発した「しずく」GCOM-W搭載のマイクロ波放射計(AMSR2)のデータを北極圏や米国内にあるNOAAの地上局で受信してJAXAに配信する協力活動を、次世代のマイクロ波放射計(AMSR3)を搭載するGOSAT-GW(2023年度打上げ予定)でも継続するというものです。また、NOAAが所有する衛星データ(JPSS)をJAXAに提供し、データの校正検証を相互に行う活動も協力に含まれています。
NOAAはJAXAのマイクロ波放射計のデータをハリケーンの予測報精度向上や、海面水温や海氷観測による気候変動モニタリング能力の強化に利用しています。JAXAとNOAAは、現在運用中の衛星「しずく」(GCOM-W)の打上げ時から、同様の協力をNOAAと継続して実施してきており、今回の協定締結により20年近いパートナーシップ関係が実現することになります。
了解覚書署名とともに行った会談において、「AMSRシリーズはJAXAの素晴らしい地球観測技術の到達点であり、これまでNOAAはその恩恵を受けてきた。
この観測はグローバル天気予報には欠かせないものであり、観測を継続することは気候変動把握にも大事である。」というボルツ長官の発言がありました。それに対し、寺田理事からは、「NOAAや米国のコミュニティがAMSRミッションを支持してくれていることに感謝する。GOSAT-GWに関しても協力が継続されることを歓迎する。」と返しました。
今後もJAXAは地球観測分野において、衛星の開発・運用・利用のすべてのフェーズで、国際パートナーと協力しながら、効率的かつ協調的な地球環境のモニタリングに貢献していきます。