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2023.05.11(木)

変動する森林炭素のモニタリング
-ALOS, ALOS-2を用いたESA気候変動イニシアティブによる全球森林地上部バイオマスデータセット最新版の公開-

森林は、世界の生物多様性の大部分と植物バイオマス(資源量)の80%以上を占める地球上の重要な構成要素です。また、森林が再生・拡大されれば、気候変動による悪影響を遅らせ、緩和する大きな機会となります。気候変動対策における人為的な温室効果ガスの排出と吸収のバランスをとってネットゼロを達成しようとする政策においては、国単位から地球規模までの森林面積や炭素蓄積量の変化を追跡できる情報は極めて重要です。地球観測衛星は、森林の地上部バイオマスの広域マッピングに有用であることは示されていましたが、森林による温室効果ガスの排出と吸収の変化を全球規模で把握することに期待が寄せられています。

今回、これらの課題解決に貢献するために、JAXAと欧州宇宙機関(ESA)は協力協定の下、ESAが推進する「気候変動イニシアティブ」(CCI)プログラムの一つである「バイオマスプロジェクト」チームは、全球の森林地上部バイオマスデータセットの最新版(バージョン4.0)を公開しました。本データセットは、5ヶ年(2010, 2017, 2018, 2019, 2020年)を対象に、年毎の全世界陸域の森林地上部バイオマス(単位:Mg/ha)を100mの空間分解能で推定したものであり、ESAのENVISATおよびSentinel-1のCバンド合成開口レーダ(SAR)、JAXAの「だいち」(ALOS)および「だいち2号」(ALOS-2)搭載のLバンドSARによる全球観測データの蓄積と精度の向上によって実現しました。この最新版では、2017年以降の年毎や、2010年から2020年までの10年単位の森林バイオマスの変化を見ることができます。

2023年11月末にアラブ首長国連邦で開催予定の「国連気候変動枠組条約第28回締結国会議」(COP28)では、パリ協定で定められた産業革命前と比較して2.0℃以下、理想的には1.5℃以下の温暖化を抑制するという包括的目標に向けた進捗状況が確認される予定です。本データセットは、森林バイオマスに関するより確かな情報を世界に提供し、森林の成長、損失、劣化に伴う炭素の純増減に関する理解をより確実なものとしていきます。また、今後さらに高精度化を進めることで、各国や国際社会における温暖化緩和行動に対して適切な意思決定情報として利用されることが期待されます。

関連リンク
ESAプレスリリース(英語)
ESA CCIバイオマスプロジェクト(英語)
ESA CCIオープンデータポータル(英語)
JAXA「だいち」(ALOS)「だいち2号」(ALOS-2)について

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