お知らせ

2024.09.13(金)

先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)搭載SPAISE3
「衛星AIS(船舶自動識別装置)」の初期機能確認に成功しました

「だいち4号」の打上げ後の初期機能確認運用にて、搭載されたSPAISE3(スパイス スリー)「衛星AIS(船舶自動識別装置)」の健全性確認、及び地上処理装置の初期動作確認を行いました。

前号機である「だいち2号」搭載のSPAISE2(スパイス ツー)では、船舶が密集する領域において、信号混信による検出能力の低下が確認されていました。これに対し、「だいち4号」搭載のSPAISE3では、混信対策の効果が確認できています。AIS信号の観測結果の一例を以下の図に示します。

左の「だいち2号」搭載SPAISE2と比べ、右の「だいち4号」搭載SPAISE3では検出できた船舶数が増加しています。

引き続きSPAISE3について、船舶からのAIS信号をスムーズに受信・処理するための最適化調整や、AIS信号受信性能向上のため地上DBF(デジタルビームフォーミング)処理の高度化を進めていきます。

AIS(船舶自動識別装置):船舶の航行安全のため、自船と周囲の船舶(または地上局等)との間で、船舶の情報を自動的にVHF帯電波で送受信する装置です。SOLAS条約(海上における人命の安全のための国際条約)により、全旅客船と300トン以上の国際航行船および500トン以上の全ての船舶に搭載が義務付けられています。AISから送信される信号(AIS信号)には、船舶の番号、種類、位置、針路、速力、航行状態及びその他の安全に関する情報が含まれます。

人工衛星(地球周回衛星)にAISを搭載すると、広い範囲のAIS信号受信が可能です。しかし、船舶が密集する海域等ではあまりに多くのAIS信号を受信してしまうため、受信した信号を処理できない(AIS信号を識別、分析できない)課題があります。

そこでSPAISE3は、そのような船舶識別が困難であった海域のAIS信号について、地上DBF処理などの工夫により受信性能を向上させる実証を行います。 海に囲まれた日本において、海上の船舶情報は海上の安全のため重要な情報となります。「だいち4号」のSPAISE3で受信したAIS情報は適切に管理の上、日本の政府機関にデータ提供することで、我が国周辺の海上安全や、海洋状況把握(MDA)分野に貢献します。

※1 海洋状況把握(MDA):https://earth.jaxa.jp/ja/application/mda/index.html

地上DBF(デジタルビームフォーミング):SPAISE3アンテナは8本のアンテナ素子で構成されており、それぞれの素子で受信した信号地上処理装置にて合成しビーム形成処理を行うことにより、不要な信号を除去する処理を行います。

加えて、「だいち4号」では合成開口レーダ(SAR)による観測と、船舶AIS信号の受信を同時に行うことができます。そのため、AIS信号を発しない船舶や、AIS信号が受信しにくい船舶についてもSAR画像によって確認することが可能です。現在、世界中の様々な衛星でAIS信号の受信、さらにSARとの同時観測が行われていますが、「だいち4号」の前号機である「だいち2号」は世界で初めてSARとAISを同時搭載した人工衛星です。JAXAは「だいち2号」の知見、経験を関係の政府機関とともに活用し、「だいち4号」での更なる性能向上や、国民の皆様の安全を守るための活用について取り組みます。

★SPAISE3の搭載システム及び地上システムは、日本電気株式会社様が開発を担当しています。

【関連サイト】
SPAISEについての説明はこちら
https://www.satnavi.jaxa.jp/ja/spaise/

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