2014
3.28
3月25日、ついに初観測画像をリリースすることができました。これまでに無い精密さで捉えられた降水の立体構造、驚いて頂けましたでしょうか?みなさまのご声援に感謝です。
でもまだ終わりではありません。気付かれた方もいるかもしれませんが、雨の強弱を示すスケールに数値の目盛りがありません。
DPRは0.2mm/時というとても弱い雨まで観測できるように設計・製造されていますが、この性能の最終確認が今まさに進められている所です。
私たちは、この作業を外部校正と呼んでいます。宇宙にいるGPM主衛星搭載DPRと、外部つまり地上に設置したアンテナとの通信による性能の最終確認です。
言葉で書くと単純なのですが、とても難しい作業です。
例えば、地上側の装置は衛星の軌道にあわせて、その都度場所を変えて設置します。現地の路面状況は様々ですが、正確にアンテナの向きを衛星に合わせなければ通信はできません。
そして、天候も影響します。DPRは降水レーダですが、この場合に限っては晴れている方がノイズの少ない良いデータが得られます。天気予報だけでなく、現場で風を読む勘も必要です。
さらに、秒速7kmで飛行するGPM主衛星は、もちろん待ってくれません。休日でも夜中でもお構いなしです。真っ暗な中で作業する場合、その難易度は格段に跳ね上がります。
こうした外部校正によって、DPRの送信電力、受信電力、アンテナパターンを最終確認します。だんだん難しさが伝わってきましたでしょうか。私なら、任されたくない仕事です。というか、できません。
この外部校正には、改井さんと正木さんがあたります。
改井さんは、なんと南極越冬隊に参加した経験のある人物。厳しい環境でも的確な判断で正確な作業を行います。そして、正木さんはDPRのデータ処理プログラム開発と外部校正をこなすパワフルなエンジニア。なかなか、多様な人材が揃っています。
この2人のフィールドワーク(現場作業)のプロフェッショナルによって複数回の外部校正を行い、降水強度のスケールに数値の目盛りを書き込むことで、DPRは本格運用に移行します。
外部校正の様子。アンテナは407q上空のGPM主衛星に向いています。
宇宙開発はハイテクだと思われがちですが、最後は人の手、そして現場作業です。
衛星開発やロケット打ち上げ等とは違い、普段あまり目立って語られることがありませんが、とても重要で難しい作業なので、今回はいつもより少し長文でお伝えしました。
降水量のスケールに数値の目盛りが書き込まれる日が、待ち遠しいです。
(GPM/DPRプロ:百束)
2014
3.24
前回のコラムで、GPM主衛星が銀色をしている理由をお話ししましたが、
もう一つ大きな外見的な特徴があります。
はい、左右非対称の太陽電池パドルです。
色だけではなく、太陽電池パドルもなんか変だぞ!
もちろんこれにも理由があるわけですが、
その前に衛星の軌道について少しお話ししなければなりません。
多くの地球観測衛星は「太陽同期軌道」を飛んでいます。
太陽同期軌道とは、衛星と太陽の位置関係が常に同じになる(つまり、衛星の軌道面にあたる太陽からの光の角度が同じになる)ように飛行することをいいます。
この軌道では、赤道上空を衛星が通過する地方時が、ほぼ一定になり、地上から見ると、毎回ほぼ同じ時刻(地方時)に衛星が飛んでくることになります。
この軌道で飛行すると、観測時の地球表面への太陽光の入射角が一定となるため、地球表面からの放射・反射量を正確に観測することができます。
太陽同期軌道のイメージ
さて、GPM主衛星も地球観測衛星なのですが、観測対象は「雨」です。
にわか雨、夕立、時雨…、
降り始める時間も降り止む時間も様々です。
毎回、同じ時刻に衛星が飛んでくる太陽同期軌道では大切な雨を見逃してしまうかもしれません。
そこで、GPM主衛星は「太陽非同期軌道」を飛びます。
これにより、様々な時刻の雨をとらえることができるのです。
しかし設計的には、ややこしくなります。
太陽光の入射角が一定ではないからです。
やっと本題に戻ってきました。
衛星は太陽電池パドルで発電して、その電力で動作しています。
一定ではない太陽光の入射角を前提として(ありとあらゆる方向からの太陽光入射を想定して)、もっとも効率的に発電を行う必要があります。
GPM主衛星が左右非対称の太陽電池パドルになっているのはそのためです。
(GPM/DPRプロ:百束)
2014
3.20
DPRについてはNASAとともに初期の点検を順調に進めています。
ところで、GPM主衛星が銀色である理由をよく聞かれます。
「本当は金色なのに、かっこよく見せるために銀色にしているの?」と言われることも度々。
確かに銀色って、カッコイイよね。
本物も銀色なのです。
人工衛星は、内部の機器の温度をコントロールするために、多層断熱材(MLI:Multi-Layer Insulation)で包まれているのですが、GPM主衛星の場合、このMLIが銀色なのです。
では、なぜ銀色か?
それは衛星の軌道高度と関係しています。
GPM主衛星は400qという低い高度を飛んでいます。
この領域では、原子状酸素(AO:Atomic Oxygen;太陽の紫外線で原子状に解離した大気由来の酸素)が数多く存在していて、とめどなく衛星に衝突しています。
原子の衝突?ちょっとイメージするのが難しいですが、MLIのような高分子フィルムは、衝突によって浸食されボロボロになってしまうのです。
それを防止するのが、この銀色=ゲルマニウムコーティングのMLIです。
しかも、導電性がある(=帯電しない)優秀な材料です。
比較的新しい材料なので、プロジェクト初期(2006年頃)には、長い時間をかけて評価試験を行いました。
宇宙技術は日々、着実に進化しています。
(GPM/DPRプロ:百束)
2014
3.12
2月28日のGPM主衛星の打上げを、1日宇宙記者として、全国から公募で集まった高校生1〜3年生のみなさんに取材していただきました。
2月27日の深夜から28日の午前にかけて、H-2Aロケットの打上げ取材やJAXAの奥村理事長、小嶋プロジェクトマネージャへのインタビューなどを行いました。
遅い時間にもかかわらず、参加していただいた高校生のみなさん、本当にありがとうございました。
この取材の内容を、壁新聞にまとめて4月ごろに宇宙教育センターのHPで紹介するほか、3月19日には、宇宙教育テレビ「GPM主衛星H-2Aロケット打上げレポート」の中でも紹介するので、ぜひご覧ください。
宇宙教育テレビ(インターネット配信)
放送日時:2014年3月19日(水) 19:00〜20:00
http://www.yac-j.or.jp/tv/124h-iia.html
(広報担当:菅谷)
2014
3.11
3月8日(土)午前10時00分(米国東部時間)、3月9日(日)午前0時00(日本時間)過ぎに、NASAのゴダード宇宙飛行センターのチームが、雨雲スキャンレーダDPR(二周波降水レーダ)を起動し、機器のチェックアウトを開始しました。
雨雲スキャンレーダDPRの性能試験及び内部校正作業は、来週まで継続します。
DPRが試験的に取得しているデータは、ゴダード宇宙飛行センターの降水データ処理システムを通じて、JAXAの筑波宇宙センターに設置されているミッション運用系システムへ伝送されています。
(広報担当:菅谷)
2014
3.7
NASAのGPM主衛星本体及びGPMマイクロ波放射計(GMI)は、計画通りに初期機能確認を進めています。
GMIは、雪や雨のデータ収集を継続しています。
(広報担当:菅谷)
2014
3.6
GPM主衛星は、順調に飛行を続けております。
NASAのGPMマイクロ波放射計(GMI)は、NASAのゴダード宇宙飛行センターに設置されている降水データ処理システム(PPS)に観測データを伝送しております。
観測機器のチームは、取得された観測データをもとに、GMIが軌道上で正常に作動していることを確認しました。
(広報担当:菅谷)
2014
3.5
GPM/DPRプロの百束です。GPM主衛星の打上げが無事成功しました!
応援していただいたすべての方に、感謝です。
さて、GPM主衛星は日米共同開発のミッションであり、
ひと口に「文化の違い」と言えば簡単ですが、海外と共同ミッションを進めるには、数多くの困難に直面します。
言葉や生活スタイル、仕事の進め方など、数え挙げればキリがありません。
そして、もちろん衛星の開発方法についても違いがあります。
例えば、DPRの試験風景の写真。
これは振動試験といって、ロケットで打上げる時の振動環境や加速度環境に宇宙機が耐えられるか確認するものです。
ただ、通常はこのように斜めに試験することはありません。
DPR(KuPR)の振動試験の様子
平和な会議が一転して…
激論に
DPRスペシャルムービーのこのシーン。
これは実際の出来事で、写真にあるような「斜め」の試験方法について、激論を交わしました。
妥協せずに納得するまで話し合う。
とても難しいですが、一つのことをやり遂げるためには、大切なことだと改めて感じます。
とあるNASA職員の車。これも文化の違い?笑
(GPM/DPRプロ:百束)
2014
3.5
GPM主衛星は、順調に飛行を続けております。
GPM主衛星に搭載されているミッション機器の一つであるNASAのGPMマイクロ波放射計(GMI)のアンテナが通常の速度で回転を始め、降雨及び雪に関するデータ収集を開始しました。
(広報担当:菅谷)
2014
3.4
GPM主衛星は、昨日の100ミリ秒の噴射によるスラスタ(推進器)の動作確認に続いて、本日は5秒間の噴射で動作確認を行いました。
この噴射により実際に軌道上における人工衛星の高度が調整されます。
本日の噴射は、微小な軌道調整ではありましたが、GPM運用管制チームがスラスタの動作確認を行うには、十分な噴射です。
(広報担当:菅谷)
2014
3.3
GPM主衛星の打上げをケネディ駐日大使が視察していました。
打上げ後の記者会見で、
「日米連携のすばらしい一例となった。」とコメントしていただきました。
打上げ後の記者会見の動画をNASAがyoutubeで公開しています。
動画は英語ですが、ぜひご覧ください。
(広報担当:菅谷)
2014
3.3
運用管制チームは、GPM主衛星の制御を行うために必要な推進システムの起動、及び初期化を行っています。
GPM主衛星には、前方に4つ、後方に8つのスラスタ(推進器)が搭載されています。軌道上では、人工衛星を適切な温度に保つための姿勢制御と高度が下がった時の軌道制御を行うために、推進システムを使用します。
(広報担当:菅谷)
2014
3.2
3月1日(土)にハイゲイン・アンテナは、データ中継衛星システム(TDRSS)を通じて地上との通信を開始しました。
TDRSSを通じることで、GPM主衛星の観測データは3時間以内で取得できるようになります。
また、3月2日(日)9時43分、DPRの電源をオンにしました。
(広報担当:菅谷)
2014
3.1
GPM主衛星が時刻と位置情報を取得するための衛星搭載GPS装置の電源がオンにされました。
また、昨日展開されたハイゲイン・アンテナは、データ中継衛星システム(TDRSS)を通じて地上と通信するための準備が進められています。
(広報担当:菅谷)