運用の準備

 人工衛星を正常に運用し、観測したデータを利用するためには、衛星の状態を管理する方法や、異常事態が発生した時の解決方法といった衛星を飛ばし続けるための作業、すなわち運用が必要です。そのため、衛星を打ち上げる前には、専用のチームを立ち上げて、管理する方法や対処の仕方を決定するための、運用の準備を進めていきます。

 

打ち上げた後に向けて多くの人たちが、僕を見守る準備をしてくれてるんだね!とっても心強いよ!

運用の準備作業は大きく分けて2つの段階に分かれています。
最初に「運用準備会」と呼ばれる会が作られ、打ち上げの4ヶ月くらい前になると「追跡管制隊」と呼ばれる組織が作られます。

運用準備会

運用準備会では、衛星の運用のやり方を考えたり、運用するための手順などを文書にしたり、実際に運用する人たちを訓練する行程を考えたりします。運用準備会のメンバーは、そのプロジェクトを立ち上げた人や、技術的な専門家や研究者、予算の管理を行う人たちから選ばれます。運用準備会の下にはさらに小さなチームが結成され、それぞれが作業を進めていきます。

チームの一覧および作業の内容について
  • 運用手順管理委員会(OPCB:Operation Procedure Control Board)

    • 運用方法の検討/運用に関わる文書計画を立案します。
    • クリティカルフェーズ、定常フェーズの運用方法、体制を検討します。
    • 追跡管制隊各班の運用手順書を作成します。
  • インテグレーション管理委員会(ICB:Integration Control Board)

    • 系間インテグレーション、適合性試験計画を立案、検討します。
    • 各試験のスケジュールを管理します。
    • ソフトウェアのコンフィグレーション管理を行います。
  • 訓練・リハーサル管理委員会(TRCB:Training and Rehearsal Control Board

    • 各種訓練・リハーサル内容の検討、計画と実施および報告を行います。
  • バス機器及びミッション機器チェックアウト管理委員会 (BMCB:Bus and Mission equipment checkout Control Board)

    • バス機器およびミッション機器のチェックアウト時の体制、運用方法の検討と手順書の作成および維持改訂を実施します。
 

僕のことをよく知ってる人たちが、手分けして準備を進めてるんだ!ここで進めた準備が、次のチームの人たちに引き継がれていくのはリレーみたいだね!

追跡管制隊

衛星の打上げが近くなってくると、運用準備会で検討したことを元に、臨時のチームが作られます。ロケットで打ち上げられてから人工衛星が安定した状態になるまでは一刻を争う状況があり得るので、迅速な対応がとれるように通常よりも多い人数の人たちが集まって、細かい手順や訓練をして打ち上げに臨みます。

具体的には、衛星の位置や軌道などの情報を評価、決定を行う追跡管制という運用業務を行います。業務の内容から、そのチームは追跡管制隊と呼ばれます。こちらもJAXAの中から、様々な部署の職員が集まって結成されます。衛星の開発や追跡管制の経験がある人はもちろん、普段は直接衛星に関わらない職員も、チームの情報連絡や広報活動の担当として参加します。

 

僕のために集まってくれる人がこんなにたくさんいるんだ!チームの情報連絡、広報活動……つなぐ役割になるんだね!

追跡管制隊の隊員は、運用準備会で作成した運用関連の文書や訓練・リハーサルの準備資料などを用いて、運用文書の見直しや修正、実際の訓練・リハーサル、最終準備確認および射場(打上げ設備)の支援作業を行います。

ここで訓練を受けた人たちが、実際に衛星が打ち上げられた後も初期運用という形で、運用作業を行います。3~4か月後に定常運用へ移行する時に、次は定常運用に割り当てられた人たちへと業務が引き継がれます。追跡管制隊も運用準備会同様、いくつもの班があり、それぞれの作業を担当します。

隊を構成する班の一覧および作業の内容について(地球観測衛星の場合)
  • 衛星班

    • 人工衛星の状態の確認、制御、解析、評価を行います。
    • 人工衛星や追跡管制システムの異常発生時の対策を行います。
    • テレメトリ・コマンド運用を行います。
    • 地球観測衛星では地球観測センサの状態を、通信・測位衛星では通信機器の状態といったミッションの評価も実施します。
  • 軌道力学班

    • 人工衛星の軌道決定や軌道予報値を作成・評価します。
    • 人工衛星の制御(マヌーバ)計画を立案します。
    • 制御実施後の状態の確認・解析・予測を行います。
  • ネットワーク管制班

    • 追跡管制網の運用計画の立案や推進を行います。
    • 宇宙通信所における追跡管制データの伝送を行います。
  • 企画管理班

    • 追跡管制隊業務の全体計画を把握して、タイムリーそして適正に作業が進んでいるかの進捗管理や、隊員の労働時間の管理などを行います。
    • 追跡管制隊内外の情報連絡や、報道関係者などに応対する広報活動を担当します。
    • 追跡管制隊業務にかかる会計や、追跡設備の適正な運用のための管理を行います。
 

僕が打ち上げられた後の準備は万端かな?
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