仕事の始まりと終わり
人工衛星に載っている機器の点検が終了すると、ついに人工衛星の本格的な運用が始まります。一人立ちした人工衛星は、私たちの安全でより豊かな暮らしのために、与えられた仕事をこなしていきます。しかし、人工衛星もいつかは寿命を迎えるときが来るのです。
仕事の始まりと終わり
人工衛星に載っている機器の点検が正常に終了すると、ミッション遂行のため、人工衛星は仕事を開始します。ここから始まる期間を定常フェーズと呼びます。
さぁ、みんなのために働くぞ~!
定常フェーズになると、地上から人工衛星に送信するコマンド(指示内容)や、人工衛星から地上に送られてくる信号の受信(ダウンリンク)などの多くの作業がJAXAから企業へと委託されます。これは人工衛星を運用する業務を効率的に行うためです。人工衛星の運用では、日々送られてくる人工衛星からの信号を確認しながら、人工衛星が無事でいるのか、搭載している機器に問題がおきていないか技術的に判断します。チェックして、 地球観測衛星の中には、いつでもどこでも同じように世界中を観測している衛星もあれば、観測要求に応じて運用する衛星もあります。そういった場合は、JAXAの第一宇宙技術部門が、ユーザ側(衛星データを利用する人たち)の窓口となって、この地域を観測してほしいというような要求を審査してとりまとめ、人工衛星の追跡管制システムを管理する担当者(管制担当者)へ伝えます。管制担当者はその要求に基づいて、人工衛星の運用計画を立てて実際に観測などの運用を行うことになります。
定常フェーズに入ると、運用を企業に委託するのでJAXA内の体制は縮小されますが、人工衛星に不具合が起こったときなどの緊急事態には、人工衛星の開発グループなどが再び集まり、どういった対処をすれば無事に復旧できるのかなどの検討をしていきます。ただし、人工衛星は宇宙にいるので、故障しても直接修理することはできません。そのため、人工衛星は打ち上げる前に地上で念入りに機器等の試験をしますが、機器や配線に予備(冗長系)を持たせたり、事故が起こりにくくなるような工夫をするなどして対策を講じています。
みんなも、大事な臓器は身体に2つあったりするよね。それと同じだね。
人工衛星の終わり
人工衛星のミッションが充分に達成され、運用を終了してもよいという判断が下されると、すべての機器の電源をオフにして、さらに送信機が電波を出さないようにコマンドを送ります。その後、人工衛星は大気抵抗により次第に高度を落とし、何年か経った後に人知れず大気圏に突入し、燃え尽きてしまうのです。
みんなの役に立てていると嬉しいなぁ。
僕たちのこと、忘れないでね!
仕事の始まりと終わりに関わる人々
初期運用フェーズが終わり定常運用フェーズになると、追跡管制隊のような臨時的組織を中心とした対応から、再び定常的な組織による対応に戻ります。人工衛星から送られてくる人工衛星の状態に関する信号を分析するとともに、地上から人工衛星に対してコマンド(指示内容)を送って、人工衛星の健康状態を管理します。
衛星によっては、地球観測データを必要とする方からの注文を受けて、いつ、どの場所の観測データを取得するかという観測計画を立てます。また、衛星が運用中も観測したデータが常に適正であるようデータを確認・補正したり、また、予め用意された計画に沿って、協力機関とともに、観測データの正しさを確かめるような実験を行うこともあります。また、観測データを、より分かりやすく、より正確な情報に変換するための研究は、衛星の運用中だけでなく、衛星の運用が終わったあとでも続いていきます。